バトトルガ氏:モンゴル人力士たちの活躍はモ日関係を大きく前進させた
政治
(ウランバートル市、2025年7月5日、国営モンツァメ通信社)オフナー・フレルスフ大統領の招請により、日本の徳仁天皇と雅子皇后両陛下がモンゴルを国賓として訪問する。これに関連し、モンゴル国立大学科学学部アジア学科教授であり、「JUGAMO」協会会長でもあるS.バトトルガ氏に、日本国と日本人について話を伺った。
ーー日本はアジア諸国の中で、ノーベル賞受賞者の数でトップに立ちます。なぜ日本人は他の国の人々と違うのでしょうか。
今日は日本について話せることを大変嬉しく思う。私は日本研究者として30年間ぐらい働いた。もちろん、日本と日本人について全てを知っているわけではないが、研究を重ねるたびに興味深く、ますます惹きつけられることに驚かされる。まず最初に、日本の地理的な位置を強調したい。日本は海に囲まれ、豊かな天然資源に恵まれていない島国でありながら、約1億2000万人が暮らしている。これだけ多くの人が島国で調和を保ちつつ、高度な発展を遂げたことが大変興味深く、注目すべき点である。また、日本人は歴史の中で数多くの試練に立ち向かい、それを克服してきた。例えば、第二次世界大戦に参戦し、国土で核爆弾の投下を受け、甚大な被害を被った。更に、現代の重大な課題に最初に立ち向かい、その解決に尽力している。そのため、この国の経験が極めて重要であると考える。加えて、欧州文明を学びながらも、自らの独自性を持つ現代国家を創り上げた歴史も非常に興味深いものである。
ーー世界を驚かせるような事例もあります。例えば、福岡市で道路が陥没し巨大な穴が発生した際、わずか48時間で完全に修復したことです。カタール及びロシアで開催されたサッカー・ワールド・カップを観戦した日本の応援団がスタジアムを清掃してから退場しました。では、日本を発展させる上で日本人のどのような資質が最も重要な役割を果たしたのでしょうか。
外部から見て、日本人は非常に規律を重んじ、倫理観が高く、互いに敬意を払う国民であると感嘆される。そのように見えるのも、日本が農耕文化があるため、人々が協力して田を耕し、米を育て、収穫するという共同体的な仕組みが伝統として存在しているからであると考えられる。日本の村落共同体で培われた協調精神や集団意識を尊重する価値観は、現在の日本社会でも高く評価され、重視されている。言い換えれば、他者への敬意、自己への敬意を重んじることは、日本文化において非常に重要な価値観とされている。要するに、公共の利益を第一に考え、自己の利益を後回しにするという独自の文化的特徴がある。
日本人は自分を強調したり、目立たせたりすることを控える。このような姿勢は、過度に控えめで、分かりづらく、窮屈であると見なされることもあるが、決して短所ではない。むしろ、集団で暮らす現代社会において極めて適応的であり、優れた長所であると評価できる。従って、現代日本の高度な発展の背景に国民のこのような気質や価値観が大きな強みとして作用したのではないかと考えられる。加えて、日本人が物事に対する忠誠心や誠実な姿勢は、非常に特徴的であり、高く評価される。日本人の特徴は、自らの役割や業務に対して全力を注ぎ、最善を尽くし、最後まで責任を持ってやり抜くことである。日本の政治家は、不適切な行為があった場合に謝罪し、責任を認めて職を辞することが多く見受けられる。日本人にとって名誉とは、自分一人のものではなく、所属する組織、家族の名誉も含む広い概念である。家族の名誉や家系の名誉を保持し、敬うことと密接に関連する。
ーーモンゴルと日本は「平和と繁栄のための特別な戦略的パートナーシップ」の関係にあります。この関係を発展させるために何が重要であると考えますか。また、日本人に接する際に注意すべき点は何ですか。
非常に重要な課題である。現在、モンゴルと日本の政治関係は過去最高の水準に達している。とはいえ、日本の価値観をより深く理解することが重要である。モンゴル側は、特定の分野や課題、方向性において優先順位をつけ、より積極的に探求・研究する必要がある。より具体的な分野において、実効性のある積極的な連携を図るべき。私は日本人の文化的・精神的特性について言及する際に、誠実さや原則を重んじる姿勢、そして同意したことに対して責任を持ち、名誉を守る文化を強調した。チンギスハーンによってモンゴル帝国が構築された時代のモンゴル民族は、高い倫理観を有し、社会が合理的に構成されていたと推察される。これは、『元朝秘史(モンゴル秘史)』にも明確に記されている。友情への忠誠、名誉を尊ぶ精神、民への真心からの慈しみという数々の価値観が我が祖先に根付いていた。歴史の中で喪失された価値観を日本の模範から学ぶことが可能であると考えている。近年、日本は世界情勢の変化に対応して、自国の歴史を振り返ることを議論している。第二次世界大戦前にどのような経験をしたのか。その後に構築した社会は正しかったのか、間違っていたのか。何を失ったのかについて話し合っている。
ーーモンゴルを訪れた日本人は、多くの素晴らしいことを書き残しています。「モンゴルの大地で私は人間の本質を再発見しました。ここで、人間と自然は切り離せない一つの存在です」と日本の有名な作家が記しています。日本人はモンゴルのどのような点により興味を持ちますか。
まるで「私たちは誰か」という問いをしているかのように聞こえる。モンゴル人は歴史の中で多様な姿を持ちながらも、「モンゴル人はこうあるべき」という様々なイメージを想像し、そのような人物を作り上げようとしてきたと思う。日本人は1900年~1920年にかけてモンゴルを訪れ、調査を行った。島に住む日本人はモンゴルで何を感じたのであろうか。多くの地域を調査した司馬遼太郎という人物は、モンゴルで多数のことを見出したに違いない。日本人はモンゴル帝国の歴史を非常に詳しく研究し、ボグド研究を高いレベルで発展させた。この国は、自らの強さを保ち、多数の重大な危機を乗り越えるために、強靭かつ賢明で、人間の本質を保持している国々の歴史を研究する。そのような国々の中にモンゴルも含まれる。日本の天皇陛下が即位後、初のモンゴル訪問をされることは、モ日関係を重視していることの表れである。
ーーモンゴル出身の力士たちは、モ日関係に多大な貢献をしたと言えるでしょう。モンゴル出身の力士が相撲界に足を踏み入れてから33年間で6人のモンゴル人横綱が誕生しました。日本人は同件についてどのような感想を持っているのでしょうか。
モンゴルは古代からブフという伝統格闘技を受け継いできた国であり、日本の相撲も独自の伝統を有している。たとえ同じく格闘技であっても、モンゴル相撲と日本の相撲は、それぞれ独自の形式、作法、文化的な特色を備えている。なぜ日本はモンゴル人力士を相撲に受け入れてきたのかと考えることがある。モンゴル人が力強いため、横綱が誕生することを予想していたのであろう。予想していたにもかかわらず、なぜ多数のモンゴル人力士を相撲界に受け入れたのか。それは外来の文化を柔軟に受け入れる能力の表れでもある。必要な物事や自己の再生・強化に資する条件を柔軟に受け入れつつも、独自の個性や伝統を守り続ける技術を培ってきた国である。米国の戦略家と地政学者は「日本人は外見上、教養ある文化人であり、いくつかの分野において戦略的な能力を発揮していることを証明した」と評価している。従って、モンゴル人力士を相撲土俵に迎え入れる際に、将来を見据えたと考えられる。外国出身の力士は相撲土俵で横綱に昇進する際に、日本の伝統を最高度に敬うことが強く求められる。「あなたは日本の一部となった。このことを常に自覚してください」と言われてきたと推察される。モンゴル出身の横綱はこの教えを忠実に守り続けている。
ーーモンゴル人力士が相撲土俵に上がったことで、どのような進歩や影響をもたらしたと日本人は考えているのでしょうか。何を語り、何を強調していますか。
日本人は自国の伝統や文化を大切にしており、その代表的な例の一つが、相撲という伝統文化である。一見すると単なる格闘技のように見えるが、力士の生活様式や上下関係の礼儀作法、相撲ならではの規律や伝統を受け継いできた文化である。モンゴル出身の横綱たちは自らを高いレベルで鍛え、数々の厳しい試練を乗り越えた末に地位を築き上げたのである。彼らが相撲界で収めた成功は、モ日関係の発展に大きく貢献し、非常に重要な役割を果たしてきた。加えて、モンゴルを世界に広く知らしめる上でも極めて重要な役割を果たした。相撲を敬愛する人々は、次第にモンゴル人力士にも深い敬意を抱くようになり、更にモンゴル相撲にも興味を持ち、観戦するようになった。従って、モンゴル人は新たな可能性を切り拓き、その過程で日本の方々から多大な支持を受けたと言っても過言ではない。相撲のような数多くの機会が次々と訪れることも十分に考えられる。モンゴル人の我々は信頼に応え、最善のレベルで二国関係を発展させるために努力すべき。
ーー「JUGAMO」協会は設立30周年を迎えています。日本帰国留学生の会は、モ日の友好と協力の懸け橋となることを目指しています。日本と日本人をモンゴル人に紹介する他、モンゴル人向けにどのような活動を行っていますか。
私は、日本帰国留学生によって構成される「JUGAMO」協会の会長を務めている。今年、設立30周年という節目の年を迎える。「JUGAMO」は日本留学中のモンゴル人、留学経験者、日本での生活経験を持つ全ての人々を繋ぐ、自由でオープンな交流団体である。過去30年間で、多くの実績を積み重ねてきた。とりわけ、モンゴルと日本の友好の懸け橋としての使命を立派に果たしてきた。日本で津波と震災が発生した際、私たちは一早く支援を呼びかけ、募金を通じて心からの連帯と共感を示した。更に、日本人をモンゴルへ呼びかけるための環境整備やビジネス分野での連携に関する情報交換を行い、来モした日本人を暖かく歓迎し、安全かつ快適に過ごせるよう対応する。その結果、日本大使館やJICA、モンゴル在住の日本人が同協会の理念を深く理解し、協力して事業を実施するようになった。日本に関連する人々の交流を促進し、紹介や情報提供を行うとともに、日本文化や日本人の本質を学び、自身の再発見に寄与する多様な活動を企画・運営している。この節目にあたり、過去30年間「JUGAMO」を代表し支えてきた全ての先輩方および若手の皆様に心よりお祝い申し上げる。


