生薬「防風」の栽培農地にて ~「防風と健康」についてボンド・オボー社の社長に聞く~
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人類が何千年も積み重ねてきた経験に基づき、薬草というカテゴリーが生まれた。どの国の伝統医学も、人体に有益な効果をもたらす薬草療法を使用している。例えば、モンゴルだけでなく、世界で最も希少植物である「防風」(学名:Saposhnikovia divaricata)は中国、韓国、日本で栄養食品や薬の成分の一つとして使われている。モンゴルでは1995年に第153号閣議決定により防風が「非常に稀な植物」として指定された。
モンゴルの数社がこの薬草を栽培しているが、最も成功しているのがボンド・ オボー社である。同社は 2011年から自然農法で防風 を栽培し始めており、現 在トゥブ県のバヤンツォグ ト、バヤンハンガイという2郡で栽培を進めている。弊社、モンツアメ通信社の取材団は、首都ウランバートルからトゥブ県のバヤンツォグトとバヤンハンガイ郡へ向かい、ボンド・オボー社の栽培現場を訪れた。小麦や菜種が盛んなこのエリアでは同社の薬草農地が目立つ。
ここには何かを栽培しているかどうかが分からなく、ただ、自然の芝草が生えているように見える。だが、よく見ると、「防風」だということが見分けられる。密生していることに気付く。
同社のJ.アリオンボルド社長に「防風」の重要性について聞くと、「この薬草はモンゴルの西洋医学に使用されていない。しかし、中国と韓国、日本など伝統医学が発展した国では、70種類の薬草の基礎薬草として使用されている。この薬草の成分には糖質の要素が非常に豊富だ。例えば、シヨ糖、果糖、ブドウ糖が高い。そのほか、「防風」 は熱性で、セリ科の植物である。モンゴル人は『ウヘル・ゴニド(牛のアニス)』と呼ぶ。冷風にさらされた場合は、「防風」を使うことで、発汗し病気から守 る。モンゴルの現代医学では、Ts.グンデグマー博士の研究によると、関節痛に良く効くことが確定され、「私の研究では、皮膚病にも効くことが分かった」と説明した。
――防風は栽培から何年後 に収穫できるようになりますか。
弊社の経験では、栽培から4年後に収穫が始まっています。収益を考えれば、根が太くなればなるほど経済的利益が大きくなります。
――収穫に機械設備を使いますか。
この薬草は機械では収穫できません。2019年度の種子植物は今年のは小さく芽生えています。その芽生える時期はそれぞれ異なるので、その根も細いのや太いのなど様々です。そのため、機械で収穫できる状況ではありません。機械による収穫は自然に有害なので人の手作業で収穫し、キログラム当たりに値付けしま す。収穫期には約40~50人、時には100人の雇用が必要とされます。
――自然環境に有益だそうですが、これについてより詳細に研究していますか。
この植物は木に似ており、地下の貯水池と呼ばれています。この植物の根が降雨後の水分を集め、太陽が昇ると周辺の植物に水を供給するからです。このように、地下水を確保するとても有益な植物です。
――「防風」はどこで生長しますか。種類はあるのでしょうか。
私が研究したところでは、「防風」には3種類があります。まず、中央アジア、いわゆるシベリアから東モンゴルの草原に成長するモンゴル品種があります。第二に、西ヨーロッパでは、私たちが食べる大根に似た品種があります。第三に、中国の揚子江流域から南の熱帯地域で育つ品種があります。それらを比べると、薬効は同様ですが、自然に見られる構造はまったく違います。
モンゴルで製薬工場を設立する希望
現場で話をしながらJ.アリオンボルド社長は特別に用意した金属製の道具で土に触れ、「防風」を取り出し、見せてくれた。2年ものだと説明された。根は生薬の成分に使用されるが、葉っぱは家畜飼料に使うと言う。社長は「葉を食べると、苦い味がします。苦い味自体があらゆる種類の炎症を治療できるという研究があります。防風は熱性のセリ科の植物なので、それを食べる動物は冬に冷えなく、寒さに強くなります。根はウランカンゾウ(甘草)に似ており、甘い味がします。
根はアスピリン製造に使われます。アスピリンは血液をサラサラにします。病気は血栓がきっかけで発症します。したがって、東洋医学の盛んな中国、韓国、日本では、西洋医学の抗生物質を病気の緩和に使用し、次に漢方薬で病気を根絶するという特徴がある」と説明してくれた。そのほか中国ではコロナウイルス治療の漢方薬の主成分に「 防風」が使われたという。モンゴルのいくつかの製薬工場で防風を使用した製薬製造の調査が進んでいる。ボンド・オボー社の近い将来の目標はモンゴルで製薬工場の設立を目指し、年々「防風」の栽培面積を拡大していくと、今後の抱負を語ってくれた。