モンゴル現代美術と遊牧民生活間の関係

カルチャー
gombosuren0625@gmail.com
2021-03-26 10:24:01

 現代美術を定義するのは難しく、画家たちはあらゆる主義の枠にはまらないで、画材と方法を組み合わせ、自分のコンセプトを表現することである。モンゴル現代美術の代表者の一人、「オルラフ・エルデム」大学の教師S.ガンズグ氏(パフォーマンスアーティスト)にインタビューした。彼はモンゴルではなく、オランダ、フィンランド、ドイツ、イタリア、台湾、韓国、香港 で現代美術のパフォーマンスを行ってきた。彼のパフォーマンスはモンゴル人の自然、地球を崇拝する根本的な考え方を現代美術と組み合わせた点に特徴を持つ。パフォーマンスアートは、芸術家自身の身体が作品を構成し、作品のテーマになる芸術である。また、特定の場所や時間における、ある個人や集団の「動き」が作品を構成するという芸術の一分野でもある。

 ――現代美術はモンゴルで普及しているが、ほとんどの人々にとっては新しいものである。パフォーマンスアーティストになった理由は何でしょうか。

 1996年に、美術・芸術大学に入学し、デザインを勉強しました。その頃、パフォーマンスアートに興味を持ち始めました。パフォーマンスアートを主軸に作品を制作して、10年余りが経っています。これまでは、コンテンポラリー、パフォーマンスを理解する人が少なく、「画家です」と自己紹介する時もありました。モンゴル国民は善または悪の業を作ると、因果の道理によってそれ相応の楽または苦の報い(果報)が生じると信じます。私は人間に最も大切なものは業というコンセプトを、美術を通して伝えようと目指してきました。さらに、我々の祖先は我々に善行の膨大な蓄積を残しています。業を通して、コンセプトや物事の本質を表現できるため、パフォーマンスアーティストになりました。一方、絵画と美術は人間の精神に存在していて、現代を生み出していったことを強調したいです。そのため、先進国では、美術は人間に自分を開く機会を与えるとみなされています。

 ――アーティストになる選択には、母親の影響が大きかったそうです。これについては。

 僕はザブハン県ソンギノ郡に 生まれた田舎の子です。子ども の頃、「アーティストにしてください」と神様に祈っていまし た。お母さんは僕の夢を応援し、実現のため、努力するよう に教えてくれました。また、私 の夢の予感もこの素晴らしい分 野へ導いてくれたと思います。

 ――子どもたちは言葉を話す前に、ペン、鉛筆を持たせると描き始めますね。

 そうです。そのため、子どもの教育で絵描き科目は他の科目より重視されます。子どもの育成、発達、想像には絵が良い影響を与えます。モンゴル国民の生活ぶり、伝統的な文化は想像や空間のあらゆる形と密接に関係しているため、子どもたちの感情が発達する他、思いやりのある、情け深い人として成長する環境が作られます。

 ――現代美術のテーマ の規模は広いです。しか し、ガンズグさんは自然と人間関係、自然とのかかわりを主軸に作品を制作しています。これについては。

 僕の地元でイフヌーデ ル(大移動)は10月、11月に始まります。季節により、近い所へ移動する時もありました。大移動の時、私はラクダにまたがったアラグ(燃料用に乾燥糞を収集する道具) の中でボールツォグを食べながら、行く様子を思い出します。このように、遊牧民生活の中で子どもの頃を過ごしました。最も寒い時期と暑い時期に移動すれば、子どもたちが大喜びします。なぜ大喜びするか、後から考えてみれば、モンゴル国民は最も寒い、最も暑い時期があらゆる困難を幸せに乗り越えさせるという古代の記憶を持つ人々です。そのため、私が育った遊牧民生活と現在の人々の生活ぶりとは全く違います。自然環境 を大切にする遊牧民の精神と、どんな困難でも乗り越える遊牧民の善行の蓄積を現代美術を通して伝えることを目指しています。遊牧民の生活ぶりを表現する他、人間が認知しようとしている古代の文化、習慣を表すことも重要です。特定のテーマを選ぶより、自分の本能に従い、作品を制作します。現代美術を知るのは重要ですが、母国の歴史や伝統を忘れてはいけないです。我々はモンゴル人という自分のアイデ ンティティーを確立すべ きです。

 ――外国で行われた数多くのフェスティバルでパフォーマンスを行ったのですね。

 人間の言語、文化はそれぞれ違います。しかし、母なる地球は唯一です。母国の美しい草原や川に 関連したパフォーマンスを外国でも行うべきだと思います。私はヨーロッパとアジアの多くの国々を訪れ、行いました。

 ――ガンズグさんは以前、ヴェネチィアのビエンナーレに参加したのですね。参加者は母国を宣伝し、母国の芸術発展の素晴らしさを感じさせることを目指します。このビエンナーレで行ったガンズグさんのパフォーマンスの内容は何でしたか。

 このビエンナーレで家畜の反芻胃とくるぶ しの骨を使い、パフォーマンスを行いました。反芻胃を頭にかぶり、モンゴルの長唄を歌ったのです。ヴェネ チィアはオペラの母国です。一方、長唄の母国はモンゴルの草原で あるというのが私のパフォーマンスの内容でした。その他、シルクロードはアジアから始まりヴェネチィアで終わります。私はこれらの文化の交差点に立っていたため、このパフォーマンスを通して自分の感情を表したのです。ヴェネチィア人は ゲルに入ったら出たくなる、出たら入りたくなるような感情を抱く不安定な都市です。おそらく長年間、数多くの観光客が訪れたからだろうと思います。自分たちの文化・芸術的価値観に注意を払わず、利己的で物質主義者の見方によって、この都市が不安定になったと思うのです。

 ――観客はどのように反応しましたか。

 実は「この人は一体何をしたのか」という目で見る人が多かったです。わからなかったかもしれないです。もともと誰かを喜ばす、他人の気に入るためにパフォーマンスを行ってるわけではない。その様なのはパフォーマンスアートではないと思っています。


 ――当時のパフォーマンスを現在のパフォーマンスと比べてみれば、どう思いますか。

 パフォーマンスは特定の時間に成立するものです。そのため、後から考えて、過去にこだわらないことが重要です。パフォーマンスを行う時、もちろん恐れを感じることがあります。他人に見える感情より、自分には見えない感情が湧いてきます。

 ――どうしても自然とは切り離せない内面の資質を持っているような気がします。外国にいても、自然とのつながりが深ま り、パフォーマンスを行うというわけですか。

 そうかもしれない。西洋の美術は素晴らしいです。長年計画し、作品を制作する偉大な巨匠による素晴らしいパフォーマンスや現代作品がいっぱいあります。しかし、思考が自由になり過ぎています。全ての文明の歴史を調べてみたら、自然と密接に関係しています。思考の自由度が高まり、自然との関係におけるタブーを破っています。

 ――タブーというと、モ ンゴル国民の間で食のタ ブーもあったのですね。このようなタブーなどもパフォーマンスアートに 反映されるのでしょうか。

 その通りです。モンゴル国民は適切な時期に善行を施します。悪行を禁止します。私は古代からのタブーを破らないと思います。外国では、人々の内臓を吊るした現代美術作品も多いです。モンゴル人なら想像もできないでしょう。美術作品という意味ではあり得るかもしれない。しかし、モンゴ人であること理解し、自分の価値観をわかる人々にはありえないものです。タブーを守り、自分の行動をある程度制限してきたため、モンゴル人の自己防衛本能は強いです。

 ――ガンズグさんには どんな都市が自然的な感情を与えましたか。

 場所によって違います。美しい木々が生え、 川が流れる所は元気をくれます。しかし、モンゴルのような自然的な感情を与える所はないです。過激な回答であるかもしれませんが。

 ――新型コロナウイル スの感染拡大が世界中で懸念されている中、どんな作品に取り組んでいますか。

 フィンランドのキュレ ーターアンヌー・ウィレウスさんは、私の作品について「ガンズグの作品は、人間は現代の発展に終止符を打ち、立ち止まって自然に戻っているような印象を受けます」 と評した。文明の時代に住む我々に与えられた最初のデータは「小麦粉」です。作物栽培により定住がはじまり、文明が生まれました。このように深く考える、計画することはたくさんあります。今は子どもたちに向けた作品を制作するため、取り組んでいます。

 ――ありがとうござい ました。今後の活躍を期 待しております。