学生から映画「ゴビ砂漠の伝説」の主演女優へ、体当たり演技に脚光B.ザミランさん:映画出演はわたしの人生を大きく変えました

カルチャー
naranchimeg199@gmail.com
2018-05-21 14:58:17
 現在、ウランバートルから地方まで上映中のUBSテレビ制作映画「ゴビ砂漠の伝説」に、ズブの素人の学生が主演していると言うので観に行った。監督:Ts.ダワージャルガル、脚本:O.エルデネ。ゴビ砂漠を舞台に部族間の争いが絶えなかったチンギスハーン以前の時代劇で、馬頭琴誕生の伝説をファンタジーで描く。戦う場面が多いながら文学的で芸術性の高い映像に惹かれる。主演のボロルエルデネ・ザミランさんは、まだ21歳の国立文化芸術大学4年生。1年生の時に、「たまたまオーディションで受かり、丸2年かけて映画ができた」と屈託ない笑顔で語る。画面で見る体当たり演技の漲るパワーはどこから出たのと訝るくらい、小柄で清楚。キュートなフェイスが印象的だ。相手をしっかり見つめてインタビューに応じてくれた。
 
――映画出演のきっかけは?
 芸大では実はピアノ専攻。作曲を学んでいた1年生の終わりごろ、軽い気持ちでオーディションがあったので受けてみた。7、8回の面接で出演が決まったが、まさか主役とは思っていなかったので、信じられなかった。ほんと、ラッキーでした。

――この映画の見どころを、あなたなりに話してください。
 モンゴル民族にとって馬頭琴がいかに象徴的かを、自由な発想で描いているので、観る人によって色んな感想が出てくると思う。戦いの中で民族の大事なものが壊されていくが、最後は馬頭琴を通して民族の文化が守られてゆく。プロデュ―サーが馬頭琴奏者でもあるので、その思いも伝わればいいかなと...。若い勇気と才能のあるグンジ(姫)が真の女王になるため、強いだけでなく、女性らしい優しさも持ち合わせた一面を見てほしい。
――映画が完成し、上映されている今の心境は?
 私にとって人生の大きな岐路でした。撮影のため2年間休学し、今は4年生に復学していますが、映画のプロの人たちと働いてみて、将来、女優業でやっていきたいと強く思うようになりました。
 
――初めての映画出演で、苦労したことも多かったと思いますが...。
 大変なことは沢山ありました。撮影のABCを周りの仲間から学び、監督の願いや、私を信じて来てくれた人々を裏切らないようにと懸命に取り組みました。撮影に関わった500人の思いを背負って、主役を任されているので、絶対に「出来ません」とは言えなかった。主役の責任感を持ち、初めての弓や乗馬の練習もがんばりました。
 
――映画を観たご両親や身近な人の反応はどうでしたか?
 家族や親戚たちは、みんなとても心配して観たようです。母は観終わったら感動して泣いていました。
 
――ところで、あなたの家庭環境はどんなですか?(この質問には同席した叔父で映画監督・プロデュ―サーのD.エンフバヤル氏が代わりに答えた)
 彼女の父は馬頭琴奏者のD.ボロル・エルデネ氏、母は民族舞踊の第一人者で国民栄誉賞を獲ったエンフ・ゲレルさんです。妹はバレエの道に進み、最近、日本で行われたバレエコンクールで3位を受賞している。彼女自身、国立音楽舞踊学校を卒業して芸術大学の舞踊舞台芸術学科に入った。芸術一家で育ち、小さいころからカリスマ性のあった子でしたよ。
 
――モンゴルの若者たちにはアメリカ映画や韓国映画が人気なようですが、あなたはどうですか?
 もちろんハリウッド映画も好きですが、日本や中国、韓国などアジアの映画に興味を持っています。アジア人の考え方、心の持ちように関心があるのです。
 
――今後、女優をめざしていく過程で、近い目標は?
 日本へは家族と一緒に何回も行っている。できれば日本の芸術大学大学院に進んで本格的に学びたいと思っています(叔父のエンフバヤル氏は大阪芸術大学映像学科卒業)。
 
――日本でも成功するよう期待しています。ありがとうございました。

※取材を終えて

 クルクルとよく動く瞳、素直な物言いは、誰からも好かれそうな人柄だ。将来が有望な女優の卵が、今後、どう成長していくかが楽しみだ。同映画「ゴビ砂漠の伝説」は、既に、日本での上映が決まっている。現在、ウランバートルの映画館で上映中だが、各館の事情が違うので問い合わせてから観に行ってほしい。