アルタンツェツェグ・モンゴル製油所執行取締役:  金銭で表せない経済的自立と技術的進歩をもたらす

経済
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2020-12-09 16:39:09

モンゴルは数年前から産油国への道を進み、これから石油精製及び資源の高付加価値化を図ろうとしている。インドの有償資金を財源に開発事業を推進。製油所はモンゴルにとって、まったく新しい産業の振興だ。エネルギーの海外依存からの脱却という意義があるほか、決して金銭で表せない経済的自立と技術的進歩をもたらす。去る10月、モンゴル製油所公社は設計エンジニアリング、調達、建設を一括した設備建設工事プロジェクトに関するERC契約を、インド系 ジー・エム・エス・プロジェクーズ・インディア社と結ぶなど、製油所建設事業は設計から工事本格化へ着々と進む。製油所開発等について、モンゴル製油所公社のダシダワー・アル タンツェツェグ執行取締役に聞いた。(11月19 日、ホームページ掲載)

――モンゴルは約80年前から、石油探査を試みています。相当の資金力と労力、技術力、時間が必要とされる当該分野は今、大きく前進しようとしています。製油所建設事業の出発するまでの道のりを振り返ると?

そうですね。ソ連地質学者のチームが1940年代から60年代中旬まで、モンゴルでの石油探査を実施した結果、モンゴルの東部及び南部で油田を発見。その後、ドルノゴビ県 ズーンバヤン油田とツァガーン・エルス油田をベースに初めての製油所を建設しました。同製油所は約20年間稼働した末、さまざまな事情があって、運用停止が強いられました。90年代から石油探査が再開。英米露といった各国地質チームは精力的に探査事業を手掛けました。ソコ・インターナショナル社とロコイル社は、タムサグ油田及びズーンバヤン油田、ツァガーン・エルス油田に係る生産物分与契約を、国を相手に結み、石油探査及び産出試験を行いま した。後に、中国系ペトロチャイナ・タムサグ社は2005年、タムサグ油田第19,21区に対して膨大な出資と労力の投入を通じて、石油開発事業へ本格的に参画を図りました。一方、モンゴルは、長年に渡って石油精製を目標にしていました。そして、インド政府借款と同国の技術協力を下に、国内製油所の開発が決断されました。これは国産石油の出発点と言えるでしょう。当該事業のフィジビリティ・スタディ(F/S調査)は、インド国営企業エンジニアーズ・インディア・リミテッド社(EIL)がまとめ、2018年11月に鉱業・重工業省に提出しました。これを機に当該事業の設計づくりが始まりました。

――製油所の場所には、ドルノゴビ県アルタンシレー郡が選定されました。鉄道沿えという点はおそらく大きな要素だったと思いますが、その他の要因はありますでしょうか。

モンゴルの重工業プラント開 発に関する研究報告書では、ドルノゴビ県サインシャンド郡が「最適場所」の一つに指摘されており、今回の石油所も「サインシャンド工業パーク」構想枠となります。重工業開発には、インフラ整備は重要な要素となります。モンゴルの場合は内陸国のため、陸路、即ち鉄道網をベースに開発するしか方法がありません。今は複数の鉄道線敷設が急ピッチで進んでいるが、元々は領内を横断する鉄道が単線のみです。他方、供給する市場と輸送網の問題もあります。ガソリン需要は、中部及びゴビ砂漠地域が他の地域に比べると、比較的多く、言い換えると、製油所は石油需要のど真ん中にあるわけですよ。

――製油所の生産力と技術について、話を移したいと思いますが。

製油所は年間生産量が150 万㌧。国際基準を満たす、高品質の石油製品、特に需要ニーズに応えられるディーゼル燃料生産を目的としております。製油所は12の精製プロセ スがある。その7つは特許技術が必要とします。我々は、二 次処理プロセスに水素化分解技術を選定しており、ライセンス調達に係る入札へ、米ユ ニバーサルオイル 、米シェブロン、伊キネティクス・テクノロジー、仏テクニップ、米メリケン、仏アクセン等の世界大手化学会社が参入を表明した。本事業は、ゴビ砂漠で全く新しい産業形態として石油・化学の「草の根」的な存在。そのため、すべてのインフラ整備が必要となります。 だから、政府は2018年以降、鉄道及び幹線道路、配電線、従業員用宿泊施設を短い間で開発しました。サインシャンド工業パークは、エルデネト及びダルハンに次いての大規模な開発事業となる土台が造られました。

――生産物詳細について教えると?

年間生産量は上述した通り、150万㌧。生産構成からすると、ディーゼル燃料は84万㌧、ガソリンは34万㌧、ジェット燃料は8万㌧、液化石油ガスは4万3000㌧、石油火力発電所用燃料は4万3000㌧となる。本事業枠で、石油火力発電所の建設も想定されており、生産物の一部は燃料として利用されます。

――同事業に対する世間の期待感は相当ありますね。事業進行は、遅くなる若しくは遅延される恐れについてどう思いますか。 

本事業は二国間取極め枠で順調に進行。大規模な開発事業はそもそも、大掛かりな計画、特に工事計画を要しており、御社従業員と協力企業の尽力があって作業は順調です。工場ではない別途の建物建設は来年3月から着工される。本事業は全く新しく、我 々は常に課題に直面しているという感じです。今は、新型コロナウイルスの感染状況が課題です。場合により、事業を延滞させる恐れもあります。我々はインド側と、オンラインを通じて業務連携を図っています。

――製油所は全く新しい技術整備の導入を意味します。どう輸入しているのでしょうか

政府とインド輸出入銀行間の借款に関する一般協定枠で、モンゴルは製油所に要される設備及び資材をインドから輸入する義務があります。設備を輸入するに、いつかの国を経由せざるを得ず、なかなかの大がかりの作業となります。モンゴル領内で組み立てる選択肢もあり得ます。

――製油所に必要な原料をどう確保していくのでしょうか。

先に述べたと思いますが、モンゴルは2010年から産油国となりました。ドルノド県タムサグ油田から採掘された原油はパイプラインを通じて、製油所への運搬を想定しています。およそ 2つの区からの原油を混ぜて原料として使います。

――国産原油の性質について教えてください。

タムサグ産の原油は含まれる硫黄量が非常に少なく、性質上のスイート原油に分類されており、精製コストが比較的安価な原油です。

――製油所の自然環境に対する影響とは?

産業の自然環境に対する影響 はある程度、想定されます。 我々も極力、自然に対する影響を最小限にとどめることを目指しています。

――製油所の作業員についてお聞きしたい。

人材育成をどうしていますか 製油所運転には作業員550人が必要です。本プロジェクトは当初、関係者5人のみで始まったが、今は90人へ増えました。精製技術、化学技術、 倉庫、パイプライン、自動制御、建設、石油探査、採掘などのエンジニア70人が活躍中。年齢層も若いです。わが社は、必要人材を段階的に育成しており、教育内容と学習支援を統一した学習カリキュラムを作成し、国内外大学機関と連携を図りました。研修 制度も備えました。

――開発事業には、何人が関 わっているのでしょうか。

F/S調査を元に建設工事は 36カ月の工期を要する。これには、5000人~8000人が作業します。

――製油所がもたらす意義とは。

あらゆる事業は実態のある効果と実態のない効果があります。新たな高付加価値商品に係る産業体系は、歳入及び国家安全保障、マクロ経済へ良い影響をもたらします。収入の蓄財は、教育及び科学、保健分野での財源増加を意味します。他方、実態のない効果はあります。それは石油・化学分野の振興を通じて、新規雇用創出とゴビ砂漠地域における産業基盤となる。最大の意義はエネルギー分野の自立です。

――本事業遂行を通じて、モンゴルとインドの関係変化とは?

本事業は、古来からの友好関係を一層強く、経済協力という新たな一ページを開くこと となります。事業がスタートの2017年以降、両国の政府要人が双方を訪問しており、対 話の焦点はずっと製油所建設 でした。

――ありがとうございまし た。今後のご活躍を期待しております。

                                                                                                                                国営通信モンツァメ 聞き手:B.オユンデルゲル