オユンエルデネ首相:国会議員の国民代表権を倍増

政治
b.undrakh@montsame.gov.mn
2023-05-20 16:23:14

オユンエルデネ首相が春季通常国会で憲法改正草案について演説した。

演説の冒頭、オユンエルデネ首相は「モンゴル国憲法では、政府における全権限は国民にあり、国民は直接選んだ代表を通じ国政に参加することで、この権利を享受する」と記載してあると述べ、モンゴル国民はこの権利を十分に享受していないとし、抜本的な改革を遅滞なく遂行すべきであると主張した。

世界的な感染症の流行と国際情勢の緊張は、発展途上国を含む国々のガバナンス、開発動向、安全保障に大きな課題について警鐘していると述べ、憲法改正の 内外要因等について下記3項目により説明した。

 

  1. 地政変化及び多極的世界

地球的資源減少、食糧不足、気候温暖化、伝染病、自然災害など多くの課題が立て続けに起こる現代の世界は、パンデミック前の政治、社会、文化、ライフスタイルに戻ることはできないとされている。世界各国の価値観が分断され、戦争の危機が迫り、世界はより多極化した新しい秩序関係に直面している。この地政状況は少なくとも1015年、さらには50年以上も続くと予想される。アントニオ・グテーレス国連事務総長が「大国の地政的競争により最も苦しんでいるのは発展途上国のみだ」と述べた。世界2大国の間に位置し、民主的政府を持つ私たちモンゴルは、どのように独立を維持し、民主主義、自由や領土保全を守り、発展できるかにおいて創意工夫と政治的リーダーシップが求められる。そこで、国会の代表力を高め、より多くの議論を通じて国の社会的課題を解決していくことが、国家安全保障において極めて重要なステップとなる。

  1. 領土的、社会的代表の確保

1992年に憲法初草案の際にも75200人の国民代表数が議論されていた。同年に可決されたとき、国会議員数は当時の総人口に基づき、平均27000人の国民を1人の議員が代表すると計算され、76人の議席を持つと立法された。しかし、今の全国総人口は1992年当時から100万人増加し、国会議員1人が平均45000人の国民を代表している。

また、議員は選挙区だけの利益に応じ国家予算に組込み、選挙業務を手伝ったスタッフの公務員配置などの現象は一般的となった。

同改正案に、議員の領土的及び社会的代表を原則とし反映させた。与党は、単独で速く進むより、全員で遠くまで辿りつく事を優先したい。

 

  1. 一人当たりGDP5000米㌦台に

以前は多数事業を開始したが、完結したものは数少ないのに対し、世界主要国は今やビッグデータ、人工知能による長期開発政策をモデル構築化している。例えば、2016年から今まで、ウランバートル市境を2回廻る全長225㌔の道路が建設されたが、行き止まりが多く渋滞緩和になっていない。これこそ、選挙区だけの利益を考えた行動が全国の発展における明確な悪影響の一例である。民間部門や投資家は、政府の不透明な方針と継続性のない計画にどれだけ多くの機会を失ったか数え切れない。モンゴル政府は「新復興戦略」実施により、鉱業の隠れた経済を告発し、コロナ渦で-4.6%まで縮小していた経済成長を2023年第1四半期の暫定見積りによれば7.6%までの増加に回復させ、輸出収入92億米㌦から125億米㌦に、国内総生産43.5兆トゥグルグから52.9兆トゥグルグに増加され、1人当たり国内総生産(GDP)は初めて5000米㌦に達した。「アジアのトラ」と言われる先進国の経験を見ると、1人当たり国内総生産が1万米㌦に達する時点から国民の生活の質が向上され、産業開発が始まる。わが国の未来において、大規模な戦略的プロジェクトを持続的に実施することは非常に重要であり、国会における建設的な議論を進める上で、総人口に比例した選挙選出が必要であり、同案に盛り込んだ。

 

本憲法改正案の裏付け

  • 2000年、2011年、2015年、2017年上程の憲法改正案に盛り込まれた人口増加に応じた議員数の均等化案、
  • 2019年国会決議第72号により設立された作業部会が実施した憲法改正草案討論会の結果、
  • 立法権と行政権の相互管理とバランス確保に関する2022年の憲法裁判決議第1号と第2号、
  • 内閣に指示した議員数の再検討、憲法改正草案の起草に関する2022年の国会決議第54号、
  • 混合選挙制度の導入と議員数増加を含む憲法改正の世論調査とテーマ別枠組みの定義に関する2022年の国会決議第34号、
  • 国家レベルの諮問世論調査に関する2022年の国会決議第80号、
  • 混合選挙制度の導入と議員数増加を含む憲法改正に関する21の政党共同声明と社会組織のコンセンサスに基づいていることを強調したい。

 

本憲法改正案の承認により、

  • 国民代表権が2倍に、議員1人当たりの権力集中が半減される。
  • より公共の基本的社会問題の解決に向けた予算立案が可能となる。
  • 多面的討論により法律承認の質が向上する。
  • 議会における外部影響力のリスクが半減される。
  • 社会組織の参画が倍増し、海外在住モンゴル人の選挙投票権が確保される。
  • 立法、行政、司法行政の統制とバランスが保証される。
  • 国政における男女平等性、各種社会層の代表参画により政策立案能力の向上等が期待される。

同憲法改正案の承認により、過去30年の過ちを正し、来たる30年を新たに始める歴史的改革となると確信する。憲法改正案を議論し、最終決定を下す権利は、国民を代表する国会のみにあると、演説を締めくくった。