知られざるオユトルゴイ鉱山
経済3月13日、オユトルゴイ鉱山の坑内掘りが本格的に稼働され、世界4位の規模を持つ坑内掘り鉱山となったことを国際的に発表した。2005年に南 ゴビ砂漠地からスタートした同プロジェクトは、現在、従業員2万人のメガ開発地と成長した。10年以上前から南ゴビ砂漠地の埋蔵資源を活用することへの批判や議論が、坑内採掘の本格稼働により一段と整理されたと言える。実際、メガ・プロジェクトの各工程は繊細な対応を必要とし、モンゴルは44ヶ国からの専門家と協力し、助けを借り、短期間で成功裡に実施できた。
オユトルゴイ銅・金鉱床は、首都ウランバートルから南に550キロ、中国国境から80キロ、タワントルゴイ鉱床から南東へ150キロの南ゴビ県に位 置する国の戦略的鉱床である。同鉱床は、世界で未開発の銅・金鉱床では最大級規模のものと考えられており、銅が約3600万トン、金が約1200~1300トンと世界的規模の埋蔵量が見込まれる。
採掘された鉱石は、有用な鉱物を分離する「選鉱工程」を経て「精鉱」となり、さらに、精鉱から不要な元素を取り除く「製錬工程」を経て金属がつくられ、初めて建築物や乗り物からスマートフォンまで、身近に使用されているさまざまな製品の素材や電線などのインフラ整備に活用される。オユトルゴイ鉱山の坑内掘り生産最盛期に、年間600万台以上の電気自動車を生産するのに十分な銅が供給されると推定される。
坑内採掘稼働の開会式で、ロブサンナムスライ・オユンエルデネ首相は、将来を見据え、経済成長を生み出すことにより、モンゴ ル国民一人ひとりが同事業の利益を受ける政策の充実性を訴えたのは、同事業に対する政府の期待の表れといえる。他方、英豪資源開発大手リオ・ティント社の契約履行と、坑内採掘における開発と生産を予定通りに完成させる必要性があるとも読み取れる。
モンゴル国民は、同事業から真の利益を注目し、期待している。「オルホン県エルデネト市のような都市開発が進まない」、「全国民がその恩恵を享受していると言い切れない」など批判されがちだが、同事業が過去10年間において、私たちに何をもたらしたのか振り返ってみよう。
国民がオユトルゴイという言葉は知っているものの「66対34の所有権対立」、「モンゴル側の低利益」に留まっていた。政府はリオ・ティント社の23億米㌦の債務を帳消し、全鉱石資源の8割が地下に埋蔵されるオユトルゴイ鉱山の坑内採掘を稼働させ、国際的に信頼できるパートナーであることを証明した。
若者と世界のノウハウ
オユトルゴイ鉱山の全従業員の97%を占めるモンゴル人の若者が世界各国からの専門家の指導、ノウハウを短期間で身に付け、世界の鉱山と競争できるまで成長したのが、同事業から得られる最大の利益である。
世界35ヶ国に拠点を持つリオティント社のオユトルゴイ鉱山幹部に100人以上のモンゴル人エンジニアの若者が抜擢され、世界の専門家と同じレベルで働いている。彼らは次のメガ・プロジェクトの先駆者、人的資源である。また、何千人もの若いモンゴル人がオユトルゴイ事業の日常業務に携わっている。彼らは、黄砂が飛び散るゴビ砂漠地に、世界最先端の巨大鉱山建設の開発を成し遂げ、大きな体験を得た。
精錬プロセシング工場の建設だけで、6万2000㌧のコンクリート材と、2万3000㌧の鉄鋼材を使用したのは、エッフェル塔の3倍に相当する。建設の段階だけで、採掘環境整備に600万立方㍍の土が移動され、550㌔離れたウランバートル市に到達する長さのケーブルが使用された。
さらに、精錬工場は4つの入り口を持つ9階建てマンションの346個分に相当するセメントとコンクリートを使ったと推定される。これらの数値と指標からみても、どれだけの労力がこの事業開発に費やされたかがわかる。そこには、若者の汗や力、知性が注ぎ込まれているのは誇らしいものである。
若者たちは、深部1300㍍の地下に鉱山、救助装置、避難所を含む『地下の町』も建設しているのだ。彼らは、オユトルゴイ鉱床の総価値の大部分をシャフトによって採掘する、世界最大の地下鉱山のブロック・ケービング採掘手法の技術を身に付けている。ブロック・ケービング手法とは、鉱体の下部をくりぬき、掘削と発破により自重で摩り下ろし、採掘するという単純な原理に基づく工法である。現行の採掘方式の中、最も生産効率が高く採掘できるため、経済的効率も高いというメリットがある。モンゴル人の従業員たちが、この世界最先端の技術を実施しているのだ。
2012年7月にオユトルゴイ鉱山の露天掘りによる初の採鉱を取り出した。露天掘りに使う3500馬力のコマツ製(日本・小松製作所)巨大ダンプトラックもモンゴル人が運転している。さらに、平和大橋の7倍の長さのコンベヤー・ベルトを建設する等、モンゴルの若者が鉱山で巨大な作業計画と技術を学び、実施していることが、同事業の最大の投資である。
オユトルゴイ鉱山の恩恵
オユトルゴイ鉱山がフル稼働するときは、モンゴル国内総生産(GDP)の3分の1に相当し、これまでより35%増加した利益を得ると報告がある。モンゴルにおける直接投資額10米㌦の内7米㌦が同事業によるものである。
12年間、オユトルゴイ鉱山の国内で費やした活動の総額が150億米㌦に上ると推定される。具体的に、同期間中、国内企業との委託・調達業務及び国家予算に対する保険・税金や各種手数料、さらに、従業員の給与等を含めた総額が34兆トゥグルグ以上になる計算だ。同社は、863社のサプライヤーと協力し、その内、567社が国内企業であり、全調達の75%を占める。2010年以来、49億3000万米㌦が国内調達のみに支出された。
調査によると、オユトルゴイ公社が政府への支払額が1%増加すれば、モンゴル国家予算の収入額は比例し0.81%増加する。同社は、2020年の国家予算収入の9.72%を単独で占め、過去4年分の総輸出額の15.4%を同社の輸出品が占める。さらに、デイルドレ・リンゲンフェルダ・オユトルゴイ社最高経営責任者(CEO)は、同鉱山売上の全額がモンゴル国内で費やされていると強調し、昨年だけで同事業によるモンゴルへの投資額は16億米㌦に上ると発表した。
上記のようにモンゴルは、同メガ・プロジェクトから直接的および間接的に恩恵を受けている。経済学者らは「さらに14億米㌦の投資をすれば、今後10年間で200億米㌦の輸出収入と20兆トゥグルグの税収が見込まれる」と主張する。
地下採掘により、今後5年間で平均35万㌧の銅が生産され、2028~2036年の間、生産量を50万㌧に増やすことを目指し、年間売上高は50億米㌦に達する見通しであり、国内における税収額は3倍(7000億トゥグルグ相当)になると推定される。
グリーン・エネルギーの基盤、銅の使用量は?
モンゴルは、鉱業部門の依存度が高く、世界で3位にランクインされる。国際労働機関(ILO)の調査によると、モンゴルは鉱業部門における雇用創出数で、世界で2位にランクされる。鉱業は国家予算の主要な構成要素であり、石炭の次に、鉄鉱石と銅精錬の輸出が入る。過去30年間の輸出量でみると、石炭5億8550万㌧、鉄精錬1億2530万㌧、銅精錬2110万㌧である。
専門家によると、環境に優しい未来を支えるグリーン・エネルギーを支える銅の消費量は、今後数年間で2550万㌧から5000万㌧に倍増すると予想される。銅1㌧は約9000米㌦であり、石炭の需要が明らかに縮小しつつある現在、銅は私たちにとって最大のチャンスとも言える。
モンゴルは世界の中で銅の供給量に占める割合はごくわずかだが、主要なプレーヤーになる可能性はある。オユトルゴイはモンゴルの唯一の銅鉱床ではなく、エルデネット鉱山(エルデネット工場公社)をはじめ17の銅鉱床がある。投資家の信頼を高め、包括的かつ論理的な責任を果たし、互恵的な関係を構築することで、持続的投資の道が開かれ、世界の主要な銅プレーヤーになる未来があるに違いない。