ツァガーン・サル商戦、驚く経済効果とは

経済
tserenlkham@montsame.gov.mn
2023-02-20 09:50:55

 政府は世界中に急速に広がっている新型コロナウイルスの新変異株「オミクロン株」の国内流入と市中感染を受け、3年連続ツァガ ーン・サル(旧正月)を自宅での祝賀と呼びかけた。来年は癸卯年で、元日は221日に当たる。従来、街並みはもっとも活気づいて見え、商業施設や市場などは商品で溢れるのが恒例だったが、コロナ禍のため卸売業や小売業の売り上げが冷え込みが続く。しかし、消費の勢いを試す「ツァガーン・サル(旧正月)商戦が2月に入ってからヒートアップ。全国各地の商業施設などで安売り合戦が繰り広げられ、景気低迷の面影が引き好況感すら漂う。先進各国では年々ネット販売が主戦場と化しているのに対して、モンゴルでは百貨店などの売上高は依然として大きい。年寄りを囲んで家族や親せきで新年を祝福するかつての行事は、今となるとなんと最低1兆トゥグルグの経済規模の商戦と化した、と指摘されるほど。昨年1月に国家統計委員会(NSC)は、旧正月にモンゴル人が約12000億トゥグルグを費やすと発表した。その規模としては、国家ナーダム祭や年末商戦と肩を並べられるほどだ。21日から、ウランバート市ハン・オール区「ミシェル・エクスポ」のメインホールで開催中の「ツァガーン・サル」見本市を訪ね、実際、この期間中にどれほどの消費の勢いがあるか探ってみた。

 ツァガーン・サル中は、年寄りへの挨拶が通常行事であるが、訪れる客人に対する「もてなし」は大事にされる。特に、豪華な食卓の用意を欠かさない。各家庭が必ずする用意は、オーツ(羊の胴体部分の丸茹したもの)、へヴィ-ン・ボーブ(揚げ物・堅パン)、ボーズ(モンゴル風小籠包)である。

 ただ、実際にちゃんとした食卓の用意をするのは、約895600世帯のうち57万世帯(64%)ぐらい、と統計局は2022年度の報告で指摘する。まず、オーツから始める。相場は、28万~45万トゥグルグ。産地などの諸条件で最高値が50万トゥグルグを超えるものもあるという。こうなると、オーツの値段が平均約39万トゥグルグと見積もると、大体約2223億トゥグルグがオーツ購入で流通されている。

 一方、ヘヴィーン・ボーブの場合は、用意するのは最低15個である。というのは、モンゴル人は縁起の良い奇数で39段の丸い形で積み上げる。一段に3個を並べる。モンゴルでもっとも一般的であるのは、5段積みであるために15個が必要だ。ヘヴィーン・ボーブの値段が平均約45005500トゥグルグと計算すると、約427500万トゥグルグが購入金額となる。

 ツァガーン・サルの定番といえば、ボーズだ。一般家庭は、最低180個のボーズを用意する。実際に手作りにせよ、購入にせよ、1個当たりの平均価格が800トゥグルグで計算すると、5130億トゥグルグがボーズ購入にかかる。そのほか、牛乳や乳製品、キャンディ、酒類などの用意がある。数量などが家庭それぞれによって違いがある。牛乳購入量が5㍑だ考えると、約2万トゥグルグになる。アーロール(乾燥ヨーグルト)も2㌔とすると、約44000トゥグルグ。キャンディは5㌔で計算すると45000トゥグルグ。酒類は平均3本で考えると、68000トゥグルグだ。総金額は約800億トゥグルグになるわけだ。こうして考えると、主な食事だけで約90万トゥグルグを使っている。そのほか、副菜などに食べるサラダ類やフルーツなどを合わせると約150万トゥグルグになる。

 上述した食卓以外の用意もある。それは、客人へのお土産だ。一般家庭にとって来賓数もバラバラであるが、平均数は約60名と想定する。お土産代も2万~3万トゥグルグと計算すると、1世帯は120万~180万トゥグルグを使っていることになる。近年、国内のメーカーのお土産セットを購入する人は増えたが、例えば、オーガニック・ブランドとして有名なラムーア(Lhamour)の「アマル・バイナウー」お正月セット(ハンドクリームと石鹸)は2万トゥグルグ。しかし、韓国プラントの同じセットは8000トゥグルグであるため、手頃な値段を優先し、購入する人も多い。

 221日~24日までの3間だけで各家庭は280万トゥグルグ以上を費やすツァガーン・サル・フィーバーは、国内で最低1兆トゥグルグに及ぶ経済的な効果をもたらす。ネット販売の可能性が指摘される中でスーパーなどの店舗への客足が一段と衰えつつある中で経済効果が大いに期待できる。