バトツェツェグ外相:「国境検問所の鉄道接続もハイレベル合意」と期待

政治
dashtseren@montsame.gov.mn
2022-08-08 13:22:01

中国の王毅国務委員兼外交部長(外相)のモンゴル訪問への期待など、バトムンフ・バトツェツェグ外務大臣に聞いた。

――中国の外相訪問は、いくつかの相互訪問の後に実施されます。政治や経済的観点から、この訪問が効果的になると、世間では大いに期待されています。外務大臣としての考えをお伺いしたいです。


 モンゴルと中国は戦略的パートナーシップ強化に向けてあらゆる分野での協力を推進しており、ハイレベル訪問が定期的に行われ、経済的に密接な関係にある隣人同士です。また、国連などの国際場裏でも密接に連携しています。だから、両国が推進する友好かつ互恵的な関係は地域における良い事例だと思います。両国の課題はこれからの関係の効果を上げるために協議の頻度を上げ、調整せねばならいとのことです。お互いに棚上げ又は対立する事案等はありません。両国の外相はここ10年、計9 回に亘り互いの国を訪問しており、各訪問は両国の友好的な関係と協力が着実に前進していることを証明しています。

 王毅外交部長は外相として4度目の訪問です。二国間貿易と経済交流の促進は、両国にとって注視すべき課題です。そのため、外相訪問で二国の共同事業、国境検問所の運営と貨物輸送問題、人の往来などの議題を焦点に協議したい考えです。具体的効果として申し上げると、鉱物資源の輸出、鉄道線の接続、物流問題及びエネルギー等の事案を解決し、具体的な解決策を探ることです。また、国境検問所の鉄道接続について両国間の最終合意がなされ、資源開発とエネルギー分野での協力推進に向けた新たな一歩となることを期待しています。

 モンゴルにとっては、中国は対外関係と貿易の重要なパートナー国で、今回の訪問では、両国の経済関係と協力をさらに発展させる具体的な要素とその質を重視しています。中国がその繁栄の恩恵を周辺国へもたらし、ともに発展する国策を掲げており、モンゴルもそれを高く評価しています。 モンゴルは、平等かつ互恵的、共に発展する原則に基づいて互いの利点とリソースを活かし、首脳合意を積極的に推進し、両国の長期開発政策を結びつけて貿易と経済協力をあらゆる面で拡大させていく余地があります。 王外相の訪問では、安定的な輸出入の増大、国境検問所の通過力の向上、無償援助や有償資金協力による事業の加速化、ザミーンウデ・エレンホト経済協力特区の開発計画、モンゴル・ロシア・中国の「3 カ国経済回廊」構想枠での事業などに係る合意が得られ、二国間の貿易と経済協力を推進する上で具体的な成果に繋がることを信じています。


 

――国境検問所の通過力向上はモンゴルにとって、死活問題と言えます。国境検問所の整備に向けた資金協力が議題として、長年取り上げられています。今回も協議されるのでしょうか。

 

外相訪問の一環で、ガショーンソハイト検問所とガンツモド検問所を結ぶ鉄道プロジェクト枠で、技術的条件に関する覚書が署名される予定です。両国の鉄道敷設が始まる法的根拠が出来るわけで、当事者も近々、必要資金 の調達に向けて取り組みを始めると見てもよいでしょう。今は、唯一の鉄道輸送がザミーンウデ検問所を通じて行われており、ガショーンソハイト国境検問所の鉄道開通は中国向けの第 2の玄関口を意味します。その開通は石炭 輸出を年間1500 万㌧増やすと推定されています。

 

――中国は巨大市場でありながら、大きな生産国です。モンゴルが経済困難を最小限の被害で乗り越えるため、 有益な事案などの共同推進、食品等の輸出入の拡大に向けた援助が必要となっています。モンゴル側の期待について教えてください。

 

中国は国内総生産が約177000 億米㌦を超え、1 人あたりのGDP12500 米㌦。世界経済の18%を占め、第2位の経済大国である。世界が新型コロナのパンデミック、多国間貿易と経済秩序が新たな課題に直面する中、モンゴルにとって、政治的関係を確認するとともに、経済的な交流をさらに強化することは重要です。これはこの訪問の主目的と言っても過言でありません。ザミーンウデ・エレンホト経済協力特区構想は中国の技術力を活かして技術革新とグリーン開発に基づく新たな開 発モデルを目指すものです。これは両国の経済関係において新たな1ページとなります。中国は、モンゴルにとって、貿易と海外投資の面で重要なパートナー。モンゴルは上期に世界57ヶ国へ輸出しており、その82.4%は中国が占めています。政府も「新復興戦略」を通じて中国との連携を重視しており、石炭などの鉱産物や農産物などの取引拡大、中国向けの国産品の多様化、法的環境の整備、植物検疫などで協力を図っています。中国側は鉱業製品や穀物、皮革、ウール、食肉や肉製品等の非鉱産物の輸入回復を段階的かつ計画的に行っており、輸出入活動も再開されています。ライ麦や小麦粉、乳製品などの中国向け輸出の条件も整備されています。ちなみに、モンゴルと中国は、経済的な関係と協力の範囲を広げるため、平等かつ互恵的、共に発展する原則に基づいて「モンゴルと中国の貿易・経済協力促進に関する中期行動計画」を改めて結ぶことで合意しています。



 

――中国は、砂漠化対策や植樹活動で優れた経験があります。両国が砂漠化対策、ウランバートル市の渋滞解決策などで引き続き協力を協議していると思いますが、その進展はありますでしょうか

 

モンゴル政府は、気候変動と温室効果ガス排出量削減、エコシステムの劣化防止、ウランバートル市の渋滞緩和などを優先事項と位置付けて対策に取り組んでいます。オユンエルデネ首相は 2 月の訪中で、「新復興戦略」で政策目標として掲げる国境検問所の再整備、エネルギー開発、工業化、市内渋滞軽減及びグリーンに関する主要プロジェクト実施にあたり、民間企業と投資家の積極的な参入を確保することで合意した。首相訪問に続き、首都知事室と財務省は市内交通渋滞緩和プロジェクトに係るフィジビリティ・スタディと環境評価調査に取り掛かっています。完成次第、中国側と引き続き協議していきます。自然環境の保全と気候変動と砂漠化、黄砂への対策として、オフナー・フレルスフ大統領が「10億本の木」の植樹イニシアティブを打ち出し、中国を含む世界各国から「歓迎」の声が上がっています。生態系の保護と砂漠化防止で、中国との協力を強化するとともに、気候変動対策、きれいで美しい自然環境を保全し、人間と自然が共存できる環境づくりで中国との間で合意 しました。今回の訪問でも同議題も取り上げられる予定で、具体的な進展を目指したいです。

 

――両国はあらゆる分野での協力を強化していくに違いありません。貿易・経済協力の強化は重要な課題ですが具体的にどんな議題が話し合うのでしょうか。エルデネブレン水力発電所を巡って協議がされるのでしょうか

 

モンゴルは中国との貿易・経済関係を一層深め、共に得する「ウィン・ウィン」の理念に基づいて開発協力をあらゆる面での強化を目指しています。 我々は、モンゴルが掲げる「長期ビジョン2050」長期開発計画と「新復興戦略」と中国が提唱する「グローバル発展イニシアティブ」、「一帯一路」構想を結び付け、貿易、投資、資源、エネルギー、インフラ整備、グリーン開発といった分野での協力促進と大規模開発推進を通じて持続可能な経済成長を構築し、両国民がその恩恵を受けられるよう協力関係を拡大させ、相互信頼を醸成するとともに、互いに支え合うことを目指しています。中国が「一帯一路」構想を打ち出してから、対モンゴル無償資金援助が増えており、障がいのある子どものためのリハビリテーション・センター建設事業を含む国民生活の向上、地方の社会・経済発展に図る有益なプロジェクトを推進しました。現在、中国はその無償資金で、ゲル地区の再開発、国境検問所の整備、マザーライ(ゴビ熊)の生態系保護に向けた必要機材の提供など、インフラ整備、居住地の環境改善、公衆福祉の分野で事業を実施しています。 一方、エルデネブレン水力発電所建設とバガノール火力発電所建設は中国の有償資金協力枠で実施されており、両国の鉱物資源とエネルギー分野での協力を誇示するものです。モンゴル側もこれらの開発事業を注視しており、出来る限り早く開始を図りたい意向です。エルデネブレン水力発電所の着工を巡って協議があります。

 

――両国の外相は、コロナのパンデミックや困難な状況の中でも友好関係を維持するため、積極的な外交を展 開しており、数回も会談や訪問を行いました。その結果は現在の課題を解決するだけではなく、将来の政治的・ 経済的状況へ影響を与えると期待されています。これについて、外相の立場を聞きたいです。

 

ここ数年、世界はコロナのパンデミックという試練に直面し、国家間の連携も弱まった面があります。一方、モンゴル と中国の外相のみならず、各関係者は臨機応変に対応して随時の連絡を維持してきました。両国外相による訪問はパンデミック下でも続いており、友好かつ積極的な関係が改めて確認されました。両国外務省はコロナ中、協議枠組みを構築し、困難な時期でも互いを支え合いました。両国は訪問中に行われる交渉と協議を通じて、二国間関係を過去と現在、そして未来という3つの次元で捉えて総括するとともに、現在、直面している課題を解決する最も適切な方法を探り、安定的かつ長期的な関係強化に向けて有益な意見交換が出来ると確信しています。

 

――国境検問所に話を元しますと、わが国は、国境の通過力の点で、世界で最も脆弱で後進的な国です。だから、政府は国境検問所の整備を急ぐとともに、物流面での障壁を対処し、輸送能力を高めることを注視しています。中国がその領内においても厳重な移動制限を敷く中で、モンゴル側は中国の移動規制の緩和を話し合っています。主な課題と難点は何でしょうか

 

国境検問所の正常化はモンゴルにとって優先課題です。両国はコロナ状況下でも、輸出入量の増加、国境検問所の正常な運用を確保すること、コロナで閉鎖された国境検問所を段階的、計画的に再開させること、貨物輸送 の正常化に向けてあらゆるレベルでの協議を通じて緊密な連携と相互的に支持し合うことで合意が出来ました。モンゴルと中国の国境付近におけるインフラ整備、道路整備、検疫基準が互いに異なっています。中国の「ゼロ・コ ロナ」政策枠での鉄道や道路の通過に対する厳重な防疫態勢は、時間やコストなど、さまざまな物流の課題をもたらすとともに、新たな試練を与えています。また、中国領内、特に国境付近においてコロナ感染が確認されていること も輸送や物流に悪影響を及ぼしています。双方の尽力で、国境検問所は段階的・計画的に再開されており、現在、7つの国境検問所における通過は再開されています。

運輸セクターは、両国の貿易及び経済協力において重要な位置を占めています。両国外務省は、パンデミックの 困難な状況下で、モンゴルが医薬品や食料品などの戦略的物資を支障なく調達できるため、より積極的に関与せ ざるを得なず、中国側も他の国に比べると、モンゴルの事情をよく配慮し、重要な物資などの調達を円滑に進められ るよう、1 万両の貨物列車を通過させるなど協力していました。 また、今年 1 11 日からザミーンウデ検問所とエレンホト検問所を結ぶ陸路において、貨物コンテナを交換する 「ゼロ・ポイント」という取り組みを実施しました。これを通じて今年上半期の時点で、1 万台の貨物コンテナが輸入されています。両国は防疫態勢の改善を図り、貿易促進に向けて検問所の通過力向上、物流障壁の対処に向けてコンテナ積替え場の拡張に着手しました。また、両国は、ガショーンソハイト検問所とガンツモド検問所、シベーフレン検問所とセヘ検問所において人の手を必要としない自動操縦技術の導入させる方向で取り組んでいます。 私は4月に王外相、天津港で発生した貨物コンテナ滞留問題の解決を巡って電話会談を行った際に、中国領内の他の港からモンゴル向けの輸送を提案しました。天津港でのコンテナ量も徐々に減り、4000台から1000台まで減少しています。また、天津港のほかに連雲港からウランバートルへの航路も開始されています。

 


――今回の訪問では、石炭輸出を巡り具体的な進展がありますでしょうか。

 

鉱産物は両国の貿易においてかなりのウエイトを占めると同時に、モンゴルの国家歳入の 20%となる。輸出量を継続的に増やすことも重要です。石炭輸出は大きな役割を果たしています。両国は 2 月の首相訪問の際に、石炭を含め、鉱産物の輸出入増加に向けて長期的かつ継続的な協力促進を確認しました。これに関連して、国境検問所の正常化は段階的・計画的に実施されており、石炭を含む鉱物資源 の輸出も量的に増えています。上期の石炭輸出量の87%は中国が占め、量産的に約710 万㌧に達しています。 鉄鉱石や製錬銅の場合は、中国は 100%買い取っています。

我々は、鉱業分野での協力を互恵的かつ継続的で、互いを補完できる形で推進する方針です。だから、鉱産物の取引基盤の強化、製品多様化などで積極的に協力していきたい考えです。

――ありがとうございました。