第75番学校、最先端のモデル校として完成、障がい児、防災、環境に手厚く配慮

社会
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2021-03-01 11:07:16

 日本の政府開発援助(ODA)に基づきJICA無償資金協力による学校案件に、ウランバートル市初等・中等教育施設整備計画がある。その第5次計画で2017年から2020年にかけ4つの学校(61教室)が建設された。2月24日、その最後に完成した第75番学校(ハンオール区)で引き渡し式が行われた。チョイドグデメド・エンフアマガラン教育科学省投資局局長が出席し、日本の施工 側と署名を交わした。バルハジャブ・トンガラグ校長は「古い校舎を壊して、新設校にしてもらい、非常に嬉しい。日本政府と国民のみなさんの支援に、学校と保護者、生徒を代表して感謝の気持ちを伝えたい」と述べた。同校は生徒1800人(二部授業)、教師とスタッフ合わせて100人の規模。UB市で一番の最新モデル校として、あらゆる施設と付属備品が充実しており、近く開校式を迎える。 

 施設管理責任者の井戸正治さん(マツダコンサルタンツモンゴル事務所)に建設コンセプトと特徴などを聞いた。第5次計画で出来た4校は、立地条件と整備形態がそれぞれ異なる学校を選んだ。

①チンゲルテイ区(中央暖房も通っていないゲル地区)

②バヤンズルフ区(高層建物が多い、増築)

③ ハンオール区(便利な街中にあり、新設)

④ナライハ地区(車で40分の遠方、増築)。

ユニバーサルデザインとしては、

① 障がい児への配慮(車椅子スロープほか)

②防災配慮(耐震設計、消火器、警報、体育館を地域の避難場所に指定、備蓄倉庫併設)

③環境配慮(省エネの効率利用、外壁に断熱材、冬場暖房に運転手法、校舎内外の緑化)。「学校の廊下に傾斜がゆるい車椅子スロープを配置、大人用と児童用の手すりに点字シール、各階に身障者用の多目的トイレ(引き戸、傾斜鏡設置)と車いす用トイレ設置。教室や廊下は明るく、各階ごとに壁の色を変え、各階の教室入り口には楽しいヒツジ、ウマ、ラクダの絵柄を付け、児童や保護者に位置が分かりやすくする配慮など、安全性プラス快適性を大事にしています」と井戸さんは強調する。

(校内を案内する井戸さん)

 普通教室以外には、シャワー付き体育館が地域住民に開かれ、災害時避難場所として非常用備品なども備えたのはモンゴルで初めて。特別教室では、図書室、コンピューター室、工作室、家庭科室、理科実 験室、芸術ホール(吸音壁、音響機材など日本製)、厨房付き給食室、保健室、それに子ども発展センター(各自の能力を引き出す、PTA会議にも使用)など至れり尽くせり。多くの教材や備品に日本製が多いのも特徴のひとつだ。 

 施工会社には大日本土木(株) と岩田地崎建設(株)が担当した。ここを指導したウランバートル市教育局の建設・投資担当 専門官のエルデネ・バヤルマグ ナイさんは第一次計画から第5 次計画までかかわって来たベテラン技術者だ。「ハードも重要だが、建物管理が出来る人材を育てるのも我々の仕事。彼は日本式技術を学び、これからのモンゴルに必要な人です」と井戸さん。課題も多い。普通児と障がい児が一緒に学べる新設校として内容は充実してきたが、生徒数に対して教室が足りないための二部授業の解消は急務。また、校内では安全が保障されていても一歩、外に出るとバリヤフリーもなく、障がい児や身障者には厳しい現実がある。社会の開発発展を促す教育施設整備計画の重要性はますます高まっていく。そこに携わる情熱と使命感を持つ人々の原動力こそ、引き続き求められていくだろう。

(署名の後、鍵の引き渡し:施主の教育科学省とウランバートル市教育局、コンサルのマツダコンサルタンツ、施工業者の岩田地崎建設・大日本土木合弁、75番学校の方々)

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