日本市場におけるモンゴルのカーペットの歴史は浅くニューフェイス 商品はユニークで客の関心を引きよせるものでなくてはならない
経済
去る7月、モンゴル産ウール・カーペットの品質向上と日本市場への輸出などを手掛けたワイエー社の梅田吉道代表を、両国間の経済交 流促進への貢献をたたえて、モンゴル国大統領が「ナイラムダル」友好勲章を授与した。梅田代表にエルデネトカーペットの販売状況や今後の展望についてインタビューを行った。
――日本ではじゅうたんの販売数が伸び悩んでいるにもかかわらずエルデネトカーペットに関しては伸びているとお聞きしましたが それはなぜでしょうか。
――日本ではじゅうたんの販売数が伸び悩んでいるにもかかわらずエルデネトカーペットに関しては伸びているとお聞きしましたが それはなぜでしょうか。
日本に進出してまだ日が 浅く、ニューフェイスで、 そして商品コンセプトがユ ニークかつ使ってみると品 質もいいと、消費者が理解し始めたことです。「遊び毛(抜け毛)が少ないこ と」「化学染料を使用していないこと」をコンセプト の柱にしました。これは時間がかかることです。ファッションのようなものとは 違います。食べ物がおいしいと言えばすぐに広がりま すがカーペットの質がいいと言って早くは広まりませんね。
その反面、簡単にブームが去ることもありませ ん。きちんといいものだと 評判が広がるようにと、今日まで10年間働きかけてき ました。そうして「モンゴルでこんなにいい商品ができているんだ」と日本の消費者が気づき 始めたのです。まだまだ知ら ない人が大半ですが一部の市 場では広がりつつあります。 これが自ずと評判になっていくのを辛抱強く育てないといけないという思いで取り組んでいます。これからまだまだ成長していくと思います。 しかしここに来て、私たちも生産者に対して注文を付けなければならなくなりまし た。量が増えると品質にばらつきが出ます。生産者側は量 が少ないうちは丁寧に作れま すが10倍や20倍になるとこれ くらいはいいだろうと目をつぶってパスさせる。どこの世界でも同じですがこれを品質 管理と言います。品質管理責 任者がもっと強い立場でイエ ス、ノーを言えるように会社 の中の立場を大事にしないといけないと指導しています。そうすれば、モンゴルじゅうたんの売り上げは確実に伸びます。モンゴルのじゅうたんは消費者にとってまだ誰も聞いたことがないユニークな商品です。化学染料を使っておらず100%ウールだということで消費者にとってもさほど高くない手が届きやすい価格で提供しています。
――EPA発効からちょうど1年ほど経ちますがその実感は ありますか。
EPA自体はいいことなのです が、実はこのルールを細かく見るとモンゴル国以外の原産 地の原料を使ってモンゴル国内で加工したものは問題ないのですが、モンゴル国以外の 国から輸入した部品を国内で 加工せずそのまま使用した場合、それが製品の重量の10% 以下のものをEPAの対象とし て認めるとされています。製 品重量の10%以上が外国で生 産された場合はEPAの対象にな りません。そこで、エルデネ ト社のじゅうたんを調べたと ころじゅうたんを裏返すと縦 糸と横糸で基盤というのです が、裏地があって、そこにウ ールを組み込んでいきます。 その基盤の原料はバングラデ シュで生産されたものです。 これはジュートという植物が 原料の糸でモンゴルでは生産 できません。その重量が24% ほどです。さらに裏にはゴム の接着剤がついていますが、 これはドイツ製でその重量の 割合は4%ほどです。これだ けを見ても外国製の部品の割 合が28%近くになります。そ ういうわけで、EPAの恩恵を受 けられていません。だからと 言って今すぐ10%ルールの見直しはできませんが、時間がかかっても解決しなければな らない問題です。そこで必要なことはエルデネトカーペット社でもモンゴル国内で加工することのできる材料を輸入することです。
EPAでモンゴル製品が日本市場に入りやす くなったにもかかわらずカーペットはその恩恵にあずかれ ないことはなんとしても解決 する必要があります。私は日 本での市場を広げるために力 を注いでいるわけではありま せん。日本の消費者は世界一 品質にこだわります。その厳しい消費者の意見を聞いて日本は品質の高い製品を生み出してきました。それを真似して中国をはじめとした海外で 製品を作っています。いいものを作るということは、品質 に厳しい消費者がいいものを 作らせているのです。これを経営者は理解しないといけま せん。ですから日本のために 努力するのではなく、モンゴルのためにも、長期的に見れば絶対にいいことです。EPA の10%というルールを30%に 緩めてほしいと言っても、国同士の交渉ですからそれはで きません。15%くらいなら妥協が許されるかもしれません がこれは取引ですからエルデ ネト社側も頑張らないといけないと工場に訴えたいと思い ます。これは私個人のためではなく、世界中のモンゴルを支持したいという消費者のためにも絶対に解決しなければいけないことだと思います。 モンゴルはメイド・イン・モ ンゴリアの比率を増やさないといけません。今まで試行錯 誤してきましたが、従業員が辞めたりしょっちゅう入れ替わったりしているとうまくいきません。ですから私が社長 にいつも言っていることは、 「モンゴルの人を育てるために投資すべき」ということで す。しかしモンゴル人に限ら ずほかに条件のいい仕事が見 つかるとすぐに辞めてしまいます。これは私自身も苦労し てきたことですが、そもそも 「人を育てる」というのは、会社に都合のいい人を育て ることではありません。むし ろ、モンゴルのためになる人を育てるということが大会社 の責任ではないでしょうか。 よそへ移ってもいいではない ですか。外国へ行ってしま ったらちょっと困りますが、 それでも技術を身に着けてま た戻ってくるならそれでいい と、将来への期待を持って 割り切りなさいと述べていま す。そうでなければ人という資源に力を注げないのです。 どうしてこんなに私がエル デネト社に力を入れているか というと、この工場にくると みんな目が輝いているんですよ。ヨシさんが来た、と言っ て従業員のおばさんたちも喜 んでくれます。これが人の心に触れる人付き合いですね。 日本の消費者をがっかりさせちゃいけない、製品を出荷す るときには「娘を外国に嫁に出すような気持ち」で出荷し てくださいと言っています。
――ウールはモンゴルでは ハウスダストやダニの原因に なると言われますが?
その反面、簡単にブームが去ることもありませ ん。きちんといいものだと 評判が広がるようにと、今日まで10年間働きかけてき ました。そうして「モンゴルでこんなにいい商品ができているんだ」と日本の消費者が気づき 始めたのです。まだまだ知ら ない人が大半ですが一部の市 場では広がりつつあります。 これが自ずと評判になっていくのを辛抱強く育てないといけないという思いで取り組んでいます。これからまだまだ成長していくと思います。 しかしここに来て、私たちも生産者に対して注文を付けなければならなくなりまし た。量が増えると品質にばらつきが出ます。生産者側は量 が少ないうちは丁寧に作れま すが10倍や20倍になるとこれ くらいはいいだろうと目をつぶってパスさせる。どこの世界でも同じですがこれを品質 管理と言います。品質管理責 任者がもっと強い立場でイエ ス、ノーを言えるように会社 の中の立場を大事にしないといけないと指導しています。そうすれば、モンゴルじゅうたんの売り上げは確実に伸びます。モンゴルのじゅうたんは消費者にとってまだ誰も聞いたことがないユニークな商品です。化学染料を使っておらず100%ウールだということで消費者にとってもさほど高くない手が届きやすい価格で提供しています。
――EPA発効からちょうど1年ほど経ちますがその実感は ありますか。
EPA自体はいいことなのです が、実はこのルールを細かく見るとモンゴル国以外の原産 地の原料を使ってモンゴル国内で加工したものは問題ないのですが、モンゴル国以外の 国から輸入した部品を国内で 加工せずそのまま使用した場合、それが製品の重量の10% 以下のものをEPAの対象とし て認めるとされています。製 品重量の10%以上が外国で生 産された場合はEPAの対象にな りません。そこで、エルデネ ト社のじゅうたんを調べたと ころじゅうたんを裏返すと縦 糸と横糸で基盤というのです が、裏地があって、そこにウ ールを組み込んでいきます。 その基盤の原料はバングラデ シュで生産されたものです。 これはジュートという植物が 原料の糸でモンゴルでは生産 できません。その重量が24% ほどです。さらに裏にはゴム の接着剤がついていますが、 これはドイツ製でその重量の 割合は4%ほどです。これだ けを見ても外国製の部品の割 合が28%近くになります。そ ういうわけで、EPAの恩恵を受 けられていません。だからと 言って今すぐ10%ルールの見直しはできませんが、時間がかかっても解決しなければな らない問題です。そこで必要なことはエルデネトカーペット社でもモンゴル国内で加工することのできる材料を輸入することです。
EPAでモンゴル製品が日本市場に入りやす くなったにもかかわらずカーペットはその恩恵にあずかれ ないことはなんとしても解決 する必要があります。私は日 本での市場を広げるために力 を注いでいるわけではありま せん。日本の消費者は世界一 品質にこだわります。その厳しい消費者の意見を聞いて日本は品質の高い製品を生み出してきました。それを真似して中国をはじめとした海外で 製品を作っています。いいものを作るということは、品質 に厳しい消費者がいいものを 作らせているのです。これを経営者は理解しないといけま せん。ですから日本のために 努力するのではなく、モンゴルのためにも、長期的に見れば絶対にいいことです。EPA の10%というルールを30%に 緩めてほしいと言っても、国同士の交渉ですからそれはで きません。15%くらいなら妥協が許されるかもしれません がこれは取引ですからエルデ ネト社側も頑張らないといけないと工場に訴えたいと思い ます。これは私個人のためではなく、世界中のモンゴルを支持したいという消費者のためにも絶対に解決しなければいけないことだと思います。 モンゴルはメイド・イン・モ ンゴリアの比率を増やさないといけません。今まで試行錯 誤してきましたが、従業員が辞めたりしょっちゅう入れ替わったりしているとうまくいきません。ですから私が社長 にいつも言っていることは、 「モンゴルの人を育てるために投資すべき」ということで す。しかしモンゴル人に限ら ずほかに条件のいい仕事が見 つかるとすぐに辞めてしまいます。これは私自身も苦労し てきたことですが、そもそも 「人を育てる」というのは、会社に都合のいい人を育て ることではありません。むし ろ、モンゴルのためになる人を育てるということが大会社 の責任ではないでしょうか。 よそへ移ってもいいではない ですか。外国へ行ってしま ったらちょっと困りますが、 それでも技術を身に着けてま た戻ってくるならそれでいい と、将来への期待を持って 割り切りなさいと述べていま す。そうでなければ人という資源に力を注げないのです。 どうしてこんなに私がエル デネト社に力を入れているか というと、この工場にくると みんな目が輝いているんですよ。ヨシさんが来た、と言っ て従業員のおばさんたちも喜 んでくれます。これが人の心に触れる人付き合いですね。 日本の消費者をがっかりさせちゃいけない、製品を出荷す るときには「娘を外国に嫁に出すような気持ち」で出荷し てくださいと言っています。
――日本の消費者のニーズ にはどのようなものがありま すか?
日本はもともと畳の文化で したが、近年では家を建てる時になるべく畳を減らしてフ ローリングにすることが多く なりました。だいたい購入 した家が完成するのは40歳く らい、住宅ローンを完済する のが65歳くらいとすると、そ の頃には足腰が弱ってきます ね。弱った足腰にはフローリ ングは非常に衝撃が強く感じ ます。畳に戻すわけにはいか ないとなったときに、カーペ ットがあるじゃないかと。そこで、品質が良くて年中使え る素材と言えばウールです。 高温多湿な梅雨の時期にこそ ウールが良いです。ウールは 湿気を吸収するので、さらっ とはしなくてもフローリング の上を直接歩くよりははるかに快適です。――ウールはモンゴルでは ハウスダストやダニの原因に なると言われますが?
それはエルデネトカーペット社が力を入れて対策してい ることです。ハウスダストの主な原因は遊び毛(抜け毛) です。実は抜け毛さえ減らせば、ウールはハウスダストを吸着するはたらきがあります。化学繊維は吸着しませ ん。反対に人が歩くと埃が散ってしまいます。ウールに はねじれ毛があるので、埃を取り込んでしまいます。ですから抜け毛を減らしたウー ルはハウスダストを取り除い てくれるのです。現在モンゴルの家庭で使われているエル デネトじゅうたんは確かにハウスダストの原因になっています。しかし日本に輸出しているものは品質が違うので、 ハウスダストを吸収しているのです。私はエルデネトカーペットを使っているモンゴル 国内やヨーロッパの消費者の 皆さんにも同じ品質のものを 使ってほしいと思います。手間もコストもかかりますが、 モンゴル人自身でその機械化 についてよく考えてほしいと10年前から言い続けて、何度か機械を入れ替えてもきました。最近また新しく良い機械 が入ったというので見に来ま した。今までそういった努力 は十分ではなかったね。でも 最近やっと分かってくれるよ うになりました。 ダニの問題というのは実は 根本的に間違いです。ダニは 暖かいところや湿っぽいとこ ろに住み着きやすいのです が、カーペットの下ではなくベッドの下などに一番出やす いです。ダニを減らすには掃 除をすることです。じゅう たんにダニが付きやすいので はなく、掃除が足りていない のが原因です。床からはがして干してください。とくに日本は湿気が多いので必ずそう してください。これをぜひ皆 さんに知っていただきたいで す。でも、モンゴルは空気が 乾燥しているのでモンゴル人 はあまりダニのことを意識す ることはないかもしれません ね。
――モンゴルでは大量生産 ができる生産ラインがないと の指摘がよくされますが?
じゅうたんに関しては十分に機械化されているのでそう いうことはないと思います。 今私たちが問題にしているの は、先ほど言った抜け毛を減 らす機械を開発して製造ライ ンに導入することです。
――最後に今後の展望をう かがってもよろしいですか。
メイド・イン・モンゴリア のじゅうたんが世界のトップ ブランドになってほしいです。その可能性はあります。 ただ、経営者を含む全社員がもっと品質にこだわりをもた なければなりません。モノを作る企業はどこも品質にこだ わります。これは会社が大き くなればなるほど難しい問題 になります。100枚なら丁寧にやっても、1000枚だとつい、 規格外の製品が出てしまいま す。その品質管理をもっと重視してほしいと思っていま す。最近になってようやく社員たちもその必要性がわかってきたようです。モンゴルに羊がいる限りはウールじゅうたんを世界に供給し続けるで しょうから、今からでも取り組んでも遅くありません。
――ありがとうございました。
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――モンゴルでは大量生産 ができる生産ラインがないと の指摘がよくされますが?
じゅうたんに関しては十分に機械化されているのでそう いうことはないと思います。 今私たちが問題にしているの は、先ほど言った抜け毛を減 らす機械を開発して製造ライ ンに導入することです。
――最後に今後の展望をう かがってもよろしいですか。
メイド・イン・モンゴリア のじゅうたんが世界のトップ ブランドになってほしいです。その可能性はあります。 ただ、経営者を含む全社員がもっと品質にこだわりをもた なければなりません。モノを作る企業はどこも品質にこだ わります。これは会社が大き くなればなるほど難しい問題 になります。100枚なら丁寧にやっても、1000枚だとつい、 規格外の製品が出てしまいま す。その品質管理をもっと重視してほしいと思っていま す。最近になってようやく社員たちもその必要性がわかってきたようです。モンゴルに羊がいる限りはウールじゅうたんを世界に供給し続けるで しょうから、今からでも取り組んでも遅くありません。
――ありがとうございました。
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エルデネトカーペット社:1981年の設立以来、国内産ナチ ュラル・ウール100%、無染色の斬新なデザインのじゅうた んを提供している。本社はウランバートルから約400キロ離 れたエルデネト市にあり、従業員は1300人ほど、国家予算へ の納税額が年間56億トゥグルグ。じゅうたんの国内需要の96 %を占めており、また「モンゴルから来た天然製品」とし て、現在製品の30%をロシア、中国、日本などの20カ国に輸 出している。2014年からノミン・ホールディング社のナチュ ラル・テックスタイル・グループに所属。国内に3つの直売 店と2つの代理店を置き、モスクワ、北京、上海、フフホト 市にも進出している。