山の王者、ユキヒョウ

特集
gombosuren0625@gmail.com
2021-01-18 10:43:47

 苦労の末の撮影

2020年に、「Q art」ギャラリーで展示された展示会の中で最も興味深いのが、写真家のB.ミャタブさんの「山の王者」展だった。この写真展では約70枚の作品が展示されたうち、30枚は鳥、ウサギなどの写真で、残りの40枚は モンゴルの希少動物であるユキヒョウの写真だった。ミャタブさんはユキヒョウ撮影を目的に、ユキヒョウの生息地の1つであるウムヌゴビ県のゴルバンサイハン山で1年を過ごした。彼は3年前にゴルバンサイハン山にユキヒョウがいることを聞き、地元の遊牧民にこの山を教えてもらい、ある日の朝、同山を訪れた。ユキヒョウ が巣穴から出てくるまで、1日中待ったが、巣穴から400㍍離れた所でユキヒョウの写真を1枚しか撮れなかった。これ以降、ユキヒョウの写真を撮る目的を追求し、2019年8月から1年をかけ、この山の洞窟でユキヒョウ4頭が住んでいるのを発見した。この1年でミャタブさんはこの山を16回訪れ、少なくとも1、2週 間この山に滞在した。この間、写真も撮れず、戻ることも多かった。ユキヒョウは子どもたちとともに、数日間狩りをしに行く。戻ってきてから、巣穴を出る場合、ほぼ2時間くらい、太陽の光を浴びる。写真家にとって、これは写真を撮影する最高の時間帯。ミャタブさんはユキヒョウの写真を撮りに行く時、ユキヒョウに遭遇した場合を想定し、細長い棒を持ってを山を登る。怖がらせる意図はなかったという。民間企業やビジネスマンに 支援を受けることもなく、自分の 目標を達成するために1年間、 ユキヒョウ撮影を追求した彼に、ユキヒョウが寄って来たことは一回もないという。希少動物の写真撮影に興味を持つ彼には、ユキヒョウを愛し、保護しようとする気持ちを 人々に思わせる願いがあったに違いない。この希少動物の保護 には国民一人一人の努力が重要 である。


 絶滅危惧種のリストから削除

ユキヒョウはモンゴルだけでなく、中央ユーラシアの山岳地帯の象徴動物である。体長は103~130㎝、尾長は92~105㎝。ネコ科 ヒョウ属に分類されるが、標高3000mの高地、酸素が少ない所に住み、過酷で低酸素の気候に適応しているため、他のネコ科動物に比べるとユキヒョウに関する研究は少ない。「The Journal Heredity」誌に掲載された研究によれば、世界中でユキヒョウは約4500~7500頭が生息している。一方、去年の個体数調査での 頭数は7000~8000頭に増加。また、専門家はユキヒョウの保護に関する数多くの事業を実施した結果、ユキヒョウ死亡数が減少したとし、野生生物絶滅のリスクを評価する国際自然保護連合(IUCN)は2017年にユキヒョウを絶滅危惧種のリストから削除し、絶滅の危険度がやや低い「危急種(vulnerable)」へと変更した。IUCNの専門家トム・マクカリティさんは「ある動物頭数が2500頭を下回った場合、この動物は絶滅危惧種とされる。ユキ ヒョウについては、絶滅から救われた」と削除理由を説明した。絶滅危惧種のリストから削除された動物は希少動物リストに記録される。ユキヒョウの生息圏は中央ユーラシアの12国に限定され、分布域はは3つに分けられる。東部はモンゴルのアルタイ山脈、中部は中国のヒマラヤ山脈やチベット高原、西部はパミール高原や天山山脈である。


 モンゴルに生息するユキヒョウ

現在、モンゴルのアルタイ山脈にユキヒョウ700頭余りが生息しており、他の分布域に住んでいるユキヒョウの頭数を合わせると、累計800~1000頭になる。そのため、世界中で登録されたユキヒョウの20%はモンゴルで生息しており、個体数でモンゴルは世界2位にランキングされている。モンゴル国民はオスのユキヒョウをゲンド、メスをギンス、ユキヒョウの子どもをグユムと呼ぶ。ユキヒョウは1975年制定の「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約」(ワシントン条約CITES)では,附属書Iに含まれるすべての国際的な取引の禁止対象となった。また、モンゴル政府は科学的調査などの目的でユキヒョウ狩の限定免許を発行したが、いまだに美しい毛皮を狙った密猟及び生息環境の悪化が続き、食料不足により家畜を襲う害獣として殺される事件も後を絶たない。遊牧民による家畜防衛のため、私的に駆除される実例が発生する一方、遊牧民側もユキヒョウの生息圏内まで移動する問題もある。こうした危機的な状況を受け、世界自然保護基金(WWF)とモンゴル政府はユキヒョウの保護を本格的に開始した。2008年にウムネゴビ県のトスト・トソンボンバ山脈に住むユキヒョウの中で23頭にGPS搭載の首輪が付けられ、ユキヒョウの行動範囲、その生態系管理、出産、生存率などを詳しく調べた。モンゴル国内ではユキヒョウの生息適地は10万3000 ㎢とされ、アルタインウブルゴビの中央部とゴビアルタイの中部で分布密度が高い。フブスグルとハンガイ山脈では低い。現在、ユキヒョウの毛皮、臓器、骨の密輸を撤廃するため、関税監理を厳しくする必要がある。専門家はまた、ユキヒョウの分布域におけるユキヒョウ密猟防止へのユニット、自然保護官の数を増やすことに必要な出費をモンゴル政府が解決すべき としている。さらに、ハンガイ山脈、フブスグルの山地に分布した個体数の状況を確定し、分布域に家畜を放牧する問題を解 決するのはユキヒョウ保護にとって重要である。