渡邊選手:モンゴルのサッカー 発展を支え、強化したい

スポーツ
gombosuren0625@gmail.com
2020-05-15 11:33:09

 渡邉卓矢(32歳)さんはサッカー選手。 彼は青年時代からサッカー界で活躍する傍ら、サッカー通して社会活動に取り組んでいる人物。彼は現在、ラオスという国で選手として新たな挑戦へ向けて準備をしているがモンゴルとの絆も未だに深い。今回、ボールひとつさえあれば、コミュニケーションができるというサッカーの魅力を、アジア諸国の多くの人に伝えようと頑張っている渡邉選手にインタビューをした。


 ――サッカーはいつ頃から始められましたか?

 サッカーを始めたのは5歳の頃です。地元柏市にあるサッカークラブへ所属しました。僕の通う小学校とは違う学校で活動しているクラブに通わせてもらいました。そのため、新しい仲間との出会いも多かったです。

 ――サッカーをプレーするとともに、サッカーを通して社会に貢献しようと思ったきっかけは何でしょうか?

 僕がカンボジアでプレーをしているときに知人から、サッカー選手として孤児院へ訪問をしてくれないかとお願いをされました。当時、僕は夢であったプロサッカー選手になったことで満足していました。正直、孤児院の子供達とはどんんな風に接すれば良いのかもわかりませんでした。しかし、孤児院の子供達は僕を見つけると「一緒にサッカーしよう!!」ととても素敵な笑顔で駆け寄ってきて、僕の手を引っ張っていきます。約1時間以上は一緒に遊んで汗だくになりました。地面も日本のように舗装された綺麗なところではなく、石が転がっていて、硬く、でこぼこしていました。 

 しかし、子供達はとても素敵な笑顔で、楽しそうにしています。サッカーを心の底から楽しんでいました。サッカーは誰しもが楽しめる。国籍も、年齢も、性別も関係ない。平等です。だけど、ふと子供達の足元を見ると裸足でした。これじゃあ怪我してしまう。日本で靴は余っているのではないか。そんな想いから彼らに靴をプレゼントしようと考えました。それがモンゴル女子代表チームへの靴の支援、そして男子チームへのシューズ提供につながるものだと思います。「本当の豊かさとは何か?」というのが僕の活動のテーマです。

 ――モンゴルのサッカー男女チームにサッカーシューズを寄付したと聞きましたが、これについてもう少し詳しく話していただけませんか?

 初めは女子の選手にシューズを提供させてもらいました。当時、モンゴル女子世代別代表監督を務められていた壱岐さんとの出会いがあり、僕は空いている時間を使って何かお手伝いをさせてもらえないか、という相談をしました。そこから女子選手たちとの付き合いが始まりました。彼女たちはとても真面目で、礼儀正しくいつも僕を温かく迎えてくれました。

 ときに厳しい練習にも直向きに取り組んでいました。その姿に、僕は感動をして何か彼女たちのためにできないかと思い、日本の知人に相談を持ちかけました。そして、関西を中心に展開しているモリヤマスポーツさんをご紹介いただき、日本で不要となっているシューズを集め、日本からモンゴルへ僕が運び、彼女たちへプレゼントしました。ほとんど新品のもの、中には汚れがついていたものもありましたが徹夜をして全て綺麗に磨き上げて行きました。みんなにはとびきり喜んで欲しかったですからね。その活動は合計3回行いました。そして、男子モンゴル代表がワールドカップアジア1次予選を勝ち抜き、日本代表と対戦することになったことにより、この機会に、モンゴルに3年お世話になった身として恩返しをしたいと考えました。また、モンゴル代表のこの大きなチャンスを精一杯に戦って欲しかったです。僕が普段プレーする仲間たちが日本代表と全力で戦う姿を日本の皆さんにも見ていただきたかったのです。そのため、モリヤマスポーツさんと話し合い、計画を立て、アシックスのシューズを全ての選手、スタッフに提供するという壮大なプロジェクトを実行しました。

 ―― モンゴルのG O Y O F C チーム、FC Selengepressチームと契約し、プレーをした時の感想はいかがでしたか?

 やはり、国が変わればサッカーも変わります。契約をする際も自分で売り込みをして、契約をしました。新たな環境に戸惑いもありました。また新たな自分が見たことがなかった景色を見て、新たな仲間とサッカーをプレーするというのは本当に幸せなことです。

 ――今までプレーしてきたチームとモンゴル男子チームの違い、特徴はありましたか?

 モンゴルは、より個人のプレーにこだわりがあるように感じました。モンゴルというと相撲のイメージがあります。モンゴルは個人スポーツが強いと思います。そうした背景がサッカーのプレースタイルにも影響をしていると思います。日本人はチームでボールを保持し、攻めるのが一般的ですが、モンゴルはそれぞれの選手が1対1の個人の勝負を仕掛けていくという特徴があります。しかし、日本人が多く在籍するようになり、日本的なサッカーが広がってきているとも感じました。

 ――モンゴルで一番気に入ったこと、印象に残ったことは何ですか?

 モンゴルのチームメイトたちは、あまり英語を話しませんでした。そのため、最初はお互いの意思疎通がなかなか難しかった。しかし、彼らは一度仲良くなると、本当に人情深く、友人を大切にするんだなと思いました。そうした人情深さというのがとても好きで、印象に残っています。今でもチームメイトたちから連絡が来て、とても嬉しいです。

 ――今後の活動についてもお願いします。

 現在、僕はラオスという国にいます。新型コロナウィルス感染拡大防止のために、こちらラオスのリーグも未だ開催がされていません。僕にとって、サッカーとは夢を与えてくれたものです。ただ単にサッカーが上手いということではなく、夢を与えてくれたのがサッカー選手なのです。だからこそ、僕はサッカー選手として、夢を与え続けて行きたい。東南アジアや中央アジアで多くの子供達、そして選手と出会いました。彼らに夢を与えたい。例えば、クラブで目立った成績を残せるのであれば、日本やアジアの近隣諸国へトライをさせてあげたい。大きな夢を描かせてあげたいと思っています。また、現在モンゴルでは選手会が新たに設置されました。主に代表の選手たちがリードして行っています。僕自身も代表のセンターバックを務めている中心選手のTurbatDaginaaとは、モンゴルのサッカー発展のためにお互い意見交換をし、男子、そして女子のモンゴルサッカーと力を合わせて支え、強化していきたいと思って

います。年末には新型コロナウィルスの状況次第ですが、日本でプレーする本物のJリーガーを招いて、サッカーイベントなどを実施したいと考えています。

 ――ありがとうございます。 

 

 ※渡邉卓矢さんの経歴千葉県出身。18歳でアルゼンチンへ留学。2009年のクラブW杯に出場したアルゼンチン1部エストゥディアンテス・デ・ラ・プラタのレゼルバに所属した。その後は日本の社会人リーグを経て、カンボジアリーグなどアジア諸国でプレー。2017年、モンゴルのGOYO FC(現在のAnduud cityFC)と契約し、同年7月にFC Selengepress(現在のSP Falcons)へ移籍。2018年にネパールへ移り、ネパールでのシーズン後に再びFC Selengepressでプレー。2019年はタイのSamutprakanFCでプレーをし、7月から Athletic 220へ移籍をした。

サッカーシューズに喜ぶ女子選手たち




裸足でプレーする孤児院の子どもたち