ナサンビレグさん: 日本で学んだ経験をモンゴルの経済的自立へ貢献

特集
41@montsame.mn
2017-11-03 12:07:04
日本帰国留学生たちの活躍ぶり  シリーズ(1)

 B.ナサンビレグ帰国留学生のJUGAMO(ジュガモ)会・会長で双日モンゴル事務所・所長にJUGAMOの活動についてお聞きした。
 
――活動内容、会員数と積極 的に活動している会員数
 JUGAMO会は、独自のフェー スブックのページを持っているのですが、その会員数は 1600名を超えている。帰国留 学生のネットワークの規模は大体1600名くらいという表現 を使っている。それとは別に 2016年11月から会費制を導入 しており、年間2万トゥグル グの会費を払った正規会員は 100名くらいだ。その中から選出された25名の役員がJUGAMO会の日常の運営を行なっ ている。 毎年恒例の活動の一つは、 年に一回の在モンゴル日本人会と共催しているハイキン グだ。例年、JUGAMOから約100名、日本人会からは30名ほど参加している。その他 に、JUGAMOの忘年会がある。 毎年約100人が参加してい る。帰国留学生就職支援のため、就職活動向けのセミナーや勉強会の開催、人材募集情 報の共有も行なっている。例えば、JUGAMO会員で、民間企業の人事を担当している者を招き、モンゴルの企業にもっとも求められている人材等について説明を受けたことがある。また、活動計画、方針なども含めてJUGAMO会の日々の運営等を議論するため、1~2 ヶ月に一度の役員会も開いて いる。毎年、ツァガーン・サ ルイベントも開催しており、 約30~40名が参加している。 大先輩の方々に挨拶をして会 員同士の親睦を図っている。
――会員はどのような職業の人が多いですか? 分野は?
 あまり偏りはなく、民間企業から各省庁の国家公務員ま でいろいろな人がいる。昔は社会学や法学などの文系が多かったが、今は日本で商学系 の勉強をしてきて、その分野で働いている人が多い。

――日本で技術を学んでくる学生が多いかと思いましたが?
 これから増えていくと思う。
 
――JUGAMOの設立の経緯につ いて教えてください。
 帰国留学生同士の親睦を図 る目的でR.ジグジド前駐日モ ンゴル大使をはじめとする先輩方々の発案で1995年に設立されている。当時は、帰国留 学生約20名で始まったと聞いている。 2010年度の総会で3つの目標を掲げたのですが、その1つ目は様々な世代の帰国留学生のネットワークの構築と拡 大だ。2つ目は日本とモンゴ ルの関係促進、3つ目は自国モンゴルの発展への貢献だ。 その為に、在モンゴル日本国 大使館、JICA、在モンゴル日本人会や在モンゴル日本商工会などと連携を取っている。
 
――個人的な質問になります が、会長は日本にはどれくらい の期間いらっしゃいましたか?
 1998年に初めて日本に行き、99年に横浜市立大学に入 学した。そこで国際関係学を学び、その後、2003~05年の 間は一橋大学の社会学研究科にて国際政治学を研究し、修士号を取得した。卒業後3年半に渡って、双日総合研究所で働いてから2008年9月にモ ンゴルに転勤した。

――日本留学に興味を持ったきっかけは?
 私が高校生のとき、モンゴ ルでは民主化が起こり、全てが変わった。母校で日本語クラスが突然設けられ、日本人の教員もやってきた。そのク ラスにたまたま編入して入っ たのが、自分だった。そこで社会主義時代は、タブーだとさ れていた資本主義(帝国/軍国 主義)国家の日本という異国文化に触れ、日本人の勤勉さ、仕事熱心さに魅了された。私にと って初めての日本との接点で、 いつかは日本に留学したいと思うようになった。
 
――国費留学ですか?
 私費留学生だ。学費は大学入学の際、当時大学側が支給 を始めた奨学金で賄えた、生 活費を稼ぐため、大学に通う傍らアルバイトをしていた。

――それは大変でしたね。
 はい。(笑)得るものもあ ったが勉強する時間があまり 無かった。

――国際政治学とは、具体的に どのような研究をしましたか?
 小国の安全保障について研究した。モンゴルは「小さな」国。厳密に言うと、モン ゴルの非核政策に関して研究した。核兵器を持たない国としてモンゴルは自国の安全を 如何に確保しようとしているのか、というテーマだった。
 
――日本に行ってよかったな と思うことはありますか?
 一番は、物事を批判的に考えることができるようになったことだ。懐疑心をもつことだね。社会主義時代の教育では、何も考えるな、という感 じの教育を受けていた。教科書に書かれていることがすべて正しい、それをひたすら暗記するという教育だった。暗 記力で成績がついていたの で、あまり物事を考えるとい う習慣はなかった。もちろん 厳密に言えば多少頭を使う必要はあったよ。(笑) いろいろな考え方や意見、情報があって、その中で自分の考え方 をもつということを日本で学んだと思う。日本に行ったとき、どうすればいいのかわからないこと、判断を迫られるような場面があって、先生にどうしたらいいか、と尋ねたところ、自分で考えて判断し なさいと言われて、それでショックを受けた。そういう自由というものに慣れた日本人には、おそらくなかなか分かりづらい感覚かもしれない。 いろいろな人が様々な意見を言うから、戸惑ったこともあった。まるで、正解なんて存在しないようで、一体どれが 正しいのだ!と。あらゆる情報を処理してその中から自分の意見を絞り出す、ということを学べたのは、日本に留学 してよかったなと思う点。21 歳で初めて日本に行って10年間、人生の中で一番大切な年 代をその地で過ごした。自身の精神的な部分はそこで構築 されたと思っている。
 
ーー帰国留学生会として今後、 目指すべき姿は?
 モンゴルの経済的自立に貢 献することである。今、国と して諸外国から借りたお金を返せない状況に陥り、国際機関や諸外国から援助を求めているというのは非常に恥ずか しいことだ。だから、この国は変わらないといけないと思 う。せっかく日本に留学して きた私たちが先頭に立って、 自らを変え、国を変えていかないと。そういう意識改革を 会員の中でしないといけない と思う。その意識が持てるか 持てないかで、国の発展に寄与できるか否かが決まってくると思うので。今まで1600人が日本に留学したといわれているが、その大半は日本の文 部省の国費留学で、それはつまり日本国民の税金で勉強したということだ。なぜ、そうして外国人に対して国民の税 金を投入するのかというと、 やはり留学生たちが国に帰って、自国を発展させてほしいという日本国民の願いからき ていると思う。私たち帰国留 学生が現状としてその使命を 果たせているかというと、全然できていない。JUGAMOの会員でも活動に積極的に参加している人はまだまだ少ない。 その理由は、おそらく一つは 忙しいこと、二つは謙虚すぎ ることだと考えられる。『私なんてまだまだ、だめな人間 なんです』だとのこの謙虚さ というのは日本で身に着けて きたものだ。でも謙虚すぎる と、何もできなくなってしまうよね。ここを意識改革していこうと、鼓舞し続けてい る。やはり私たちが頑張らな いと、よい方向に変えていくことは難しいと思うので。そ のようにしてJUGAMOは結束して頑張っていこうと、会長の立場から考えている。
 
――その目標を成すために今 後していきたい具体的な活動 プランはありますか?
 もちろん。特に今年は国交 樹立関係45周年でもあり、日 本・モンゴル間でEPAが締結された。従い、モンゴルの中小企業に対してEPAについて のレクチャーをするのは一つの方法と思っている。今のモンゴル市場に関していうと、 日系企業が参入してビジネス を始めようとしても非常にや りづらいというのが実情である。せっかく日本で学んだ帰国留学生たちが自分の経験や 身に付けた知識を存分に活か せる就職先も中々増えないということになる。実際に、就職先の会社の撤退を受けて無職になる帰国留学生がいれば、母国に帰って来てもなかなか就職できないと言う後輩 もいる。更に、日本人とモン ゴル人は、外見は似ていても中身(文化面)は正反対の人たちで、それをお互いわかっていないところがある。橋渡し出来るのは両国文化に精通している帰国留学生。基本的に、帰国留学生の存在と価値を広く知ってもらうことによ って、両国間の協力関係の拡大と職場創出につなげたいと 思う。 今のモンゴルの現状とし て、いろいろな国々から援助 を受けているが、これが当たり前になってしまってはいけ ない。国を運営するのですから、自分たちで働いて維持するという意識が必要。外国から投資してもらうため、信用 してもらわないといけない。 そのためには、政策の一貫 性と実行力が必要だと思う。 JUGAMO会としては各種のマス メディアを通して情報発信をして帰国留学生の声を届けることでその知名度を上げられ ないかと考えている。これは 地道で長い道のりになるとは 思うが...。
 
――ありがとうございました。