ホスタイ国立公園でモウコノウマの足跡を辿る

特集
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2021-11-01 10:20:43

 モウコノウマ(別名タヒ)は1969年に野生下では絶滅したと見られていたが、オランダのモウコノウマ保護基金、モンゴルの自然保護連盟、ホスタイ国立公園が29年間協力した結果、モウコノウマが再び野生化され、現在、モンゴルにおけるモウコノウマの頭数は約800頭に達している。弊社の取材団はモウコノウマについての詳細な情報を得るため、トゥブ県アルタンボラグ郡にあるホスタイ国立公園を訪問した。 

野生絶滅

 ロシアの探検家ニコライ・プルツェワルスキー大佐は1878年にモンゴルを旅行した時、ロシア・中国国境警備隊の司令官にモンゴルのゴビで狩猟された馬の皮と頭蓋骨をプレゼントとして貰い、野生馬について初めて知識を得た。それ以降、この野生馬に興味を持ち、野生馬の頭蓋骨をサンクトペテルブルク自然史博物館の研究者ポリャコフ氏に引き渡した。ポリャコフ氏はこの頭蓋骨を調べた結果、新しい種であることが判明した。これで1891年にプルツェワルスキー馬として記録された。発見以後は数多くの国々の研究者や学者が世界で残った唯一の野生馬を貰い受けたいため、モンゴルゴビを目指した。1897年~1903年までモンゴルのゴビから88頭のモウコノウマが欧米諸国の動物園に送られており、53頭はヨーロッパに無事到着。その子孫が生き残っていたことから、飼育下での計画的な繁殖が始められ、再野生化が試みられた。一方、モンゴルのゴビに生息していた少数の個体は徐々に減少し、1969年までに一度絶滅した。しかし、ヨーロッパへ送られた53頭のうち、13頭が繁殖され、子孫が生き残った。 

母国への復帰 

 野生絶滅したモウコノウマの再野生化は、モウコノウマ復活の唯一の方法だと学者たちの意見が一致し、オランダのモウコウマ保護基金がモンゴル自然保護連と共同で1992年に、トゥブ県のホスタイ国立公園にモウコノウマの再野生化活動を開始させた。それ以降、2000年までの8年間、5回の輸送で84頭のモウコノウマをモンゴルヘ移住させた。野生から離れてほぼ100年になったモウコノウマは気温差の激しいモンゴルで生き延びるかが学者たちにとって疑問だったが、それにも関わらず、モウコノウマの野生化は成功した。
忘れられない人々 

 モウコノウマの再野生化に重要な役割を果たした人がオランダのモウコノウマ保護基金の創立者ヤン・ボウマン氏だ。ボウマン氏は1974年からモンゴルにおけるモウコノウマの野生化、保護に関する幅広い範囲の調査を実施してきた。モンゴル大統領令により、彼に「ナイラムダル」友好勲章が授与された。彼が死亡した後、彼の奥さんのインゲ・ボウマンさんが、夫の活動を継続し、ホスタイ国立公園管理所の設備、管理の強化、従業員の能力向上に向けて努力してきた。インゲ・ボウマンさんは2012年にモンゴル大統領より「北極星勲章」を受賞した。 
 オランドのモウコノウマ保護基金は1974年に創立され、当時、世界中にいるモウコノウマの頭数は275頭だった。インゲ・ボウマンさんは「この基金はモウコノウマの保護活動、宣伝を積極的に実施し、世間の注目を集めたことがモウコノウマ野生化の始まりとなった」とテレビ番組出演の時に語った。ヤン・ボウマン氏は1972年に奥さんとともに、動物園を訪問した際、モウコノウマの哀れな姿と出会った。それ以降、二人ともモウコノウマの保護、野生化活動に取り組むと決意した。こうして、モンゴルの希少動物保護に取り組むモンゴル自然連盟のJ.ツェレンデレグ副会長と出会ったことによりモウコノウマの野生化が本格化された。 
 モウコノウマの保護 
 ウランバートル市から80㌔離れたホスタイ国立公園は、モウコノウマの野生化や個体群構築のために活動している。5万㌶にわたるこの公園には1992年以来、遊牧世帯は一戸もない。モウコノウマの生息環境構築に関して、この辺の遊牧民を移住させた。ホスタイ国立公園には40人の従業員が務めており、夏季は契約保護官を兼務する。同公園は昨年、KWF国際プロジェクトの一環として若手従業員の社会問題を解決し、16世帯の住宅を建築した。ホスタイ山脈では12人の自然保護官、3人の生物学者が5万㌶にわたって野外調査を通常的に実施している。 
 モンゴルの3つの場所でモウコノウマが野生化されたうち、ホスタイ国立公園では390頭余り、ゴビアルタイ県ボガト郡で約290頭、ザブハン県ドゥルブルジン郡のホミーンタルで約90頭が生息している。国際自然保護連合の絶滅危惧種レッドリストはモウコノウマの個体群はモンゴルだけに構築されたとしている。
モウコノウマは1969年~1996年までに「野生絶滅種」、2008年に「近絶滅種」、2011年に「絶滅危惧種」となった。生物学、自然保護学によると、野生絶滅した動物の個体群数は500を超えた場合、野生化が成功したと見なされる。一方、ホスタイ国立公園は2025年~30年に個体群数を500に達成させる目標を立てている。現在、この公園を主体に国際モウコノウマ研究所が開所されており、世界の数多くの学者らが研究するための場所となった。
足の不自由なボルローの歴史 

 弊社の記者団はモウコノウマを視察するため、モウコノウマが水飲みに山を下りる際、保護場を訪れた。轟音とホコリを立てて、駆けてくるモウコノウマの群れが井戸に近づく時、撮影した。この群れの中で、たった一頭、足の不自由な雄モウコノウマ(種馬)が歩いていた。呼び名はボルロー。ボルローは7年~8年間、守ってきた13頭のモウコノウマからなる群れを他の種馬により失い、一頭で生きている。モウコノウマは家畜の馬のように去勢されることがなく、全ての雄モウコノウマは種馬として成長する。そのため、7歳~8歳の雄モウコノウマは種牡馬になるため、群れを率いる他の種馬と戦う。この戦いで毎年2~3頭の種馬が怪我し、死亡することもあるという。
観光と保護 

 ホスタイ国立公園の資金源は観光である。ウランバートル市に最も近く、設備が充実しているキャンプ地が観光客にサービスを提供している。年間1万5000人~3万人の観光客がホスタイ国立公園を訪れ、これにより15億~2億トゥグルグの資金が調達されるという。この公園では観光客を受け入れる「ホスタイ」、「モイルト」の2つのキャンプ地がある。しかし、コロナ禍の影響で営業中止となり、過去2年間は観光客を受け入れなかった。従tて、資金源は7億~9億まで減少。多大な損失を受けているにも関わらず、自然保護活動は通常通り進んでいるという。同公園の管理所は希少動物、希少植物だけでなく、科学アカデミー・考古学研究所との共同でこの地域で記録されたモンゴル史、文化に関する場所を保護する義務がある。 
 ホスタイ国立公園におけるモウコノウマの保護で他の動物の頭数も短期間に急増している。例えば、1950年に約50頭だった赤鹿は現在、約1300頭に達した。また、ドンドゴビ県とトゥブ県の地域に生息してきたサイガは同公園に定住するようになり、頭数は夏季に400~500頭、冬季は1000~2000頭にまでなっている。