ラグワスレン総裁:コロナ禍乗り越えるにモンゴルなりの特性を活かし、中期持続力を図る政策を推進

経済
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2020-07-28 16:48:38

 新型コロナウイルスの感染防止措置に伴う移動の制限、輸出業の不振などで経済活動が落ち込んでいる。その中、モンゴルの経済に関する現状、今後の展望、信用格付け問題、グレーリスト入りなどを巡って、モンゴル銀行のビャドラン・ラグワスレン総裁に聞いた。

 ――今の経済状況について、モンゴル銀行(BoM)はどうみているでしょうか。

簡単に言うと、世界経済が4~5%縮小する中で、モンゴルの経済だけは成長を続けるとは考えられない。近い将来も不透明感が残る。このたびの金融政策委員会の会議でも、金融見通しに関する議論の際に、上半期の経済成長をマイナス7%、20年通期をマイナス1%だと推測されていた。

 国際金融機関も同様な見解を示している模様だ。今、景気対策、経済支援は大事であるが、将来的な不測の事態に対処すべく家計・企業・国家といったあらゆる主体は資金の節約を図るべきだ。つまり、今後は、成長回復というより持続化・安定化が焦点になるだろう。BoMも個人や企業が直面する困窮を緩和させながら、政策領域を維持して中期の安定化に向けた政策推進を実施している。

 その中、国際金融機関らの助言や他国の中央銀行が執行した先行例をそれぞれ考慮しながら、モンゴルの特性を活かす方向性で総合的な金融政策を実施。以上の取り組みは経済を短期・中期に後押しするほか、金融の安定化を図る。但し、新型コロナウイルスの状況収束、大国間の貿易摩擦、外部需要、資源価格などの不確実性の要因は依然としてある。

 ――総合的な金融政策は実施されているとおっしゃっていますが、どんな決定がくだされたのでしょうか。その根拠は?

金融政策委員会は年内、非定期会議を含む3回の会議を開き、経済及び金融セクターが直面しかねないリスクを緩和させることを目的に予防的な対策取組を実施した。BoMは3月と4月の会議を通じて貸出拡大及びその利率引き下げを目的に2ポイント下げた。なお、銀行流動性の促進、低金利によるレポ取引推進を目的に、BoMは政策金利誘導ゾーンを狭くして市場調節を行った。その結果、就業銀行向け貸出金利を通常の13%から10%に引き下げた。

 さらにBoMは準備率操作(準備率を10.5%から8.5%へ2ポイント下げ)を通じて金融を緩和させ、およそ3200億トゥグルグを流動させた。準備率を下げさせることにより、金融機関のコスト負担の低減を通じてその貸出態度等に影響を与える。

そのほか、政府が掲げる「アルト(金)」プログラムのおかげで、BoMによる貴金属買取も増えた。

 ――景気悪化に伴い、家計は困窮状況となります。この対策は?

家計収入とは経済成長に左右される。現状は個人が銀行融資を申し込む時、又は銀行が融資を行う時、収入の安定性をなるべく正確に評価した上で適した融資全額を推定すべきということを突き付けている。

 約定通りの返済が困難になるとは、借主は貸主である銀行経営のみならず、金融システム安定化に脅かされることとなる。返済困難者の救済を目的に個人向け貸付なら元本返済を12カ月、住宅ローンなら6カ月一旦停止する決定は実行されている。

この結果、借主の手元の現金残高も増えた。従って、返済不履行と家計消費の急減を避けられた。6月19日の時点で、個人消費向け融資利用者の12.9%に当たる65491人、総額5728億トゥグルグ、住宅ローン利用者の43%に当たる38270人、総額2兆トゥグルグにつき、返済計画変更があった。

 ――業績悪化を原因の返済不履行に陥る状況に直面しているのではないでしょうか

企業、特に高金利借入をした事業者は、売上が伸び悩むと、資金圧力に見舞われる。我々がまとめた実態調査(6月19時点)では、国内事業者の37%は新型コロナウイルスの打撃を受けたことを分かった。新型コロナの影響軽減を目的の救済措置を実施している。

 ――米ドル高は続いていますが、BoMの対策は?

その通りだ。米㌦対トゥグルグは年始以来、3%下がった。人民元対トゥグルグは1.8%下がり、ロシアのルーブルなら9.1%反発した。外貨対トゥグルグは、実質価値と名目価値が3%~1%反発。米㌦高も必然的とも言える。他方、5カ月の輸出高も39%減少した場合、為替市場への調節を行わなければならない。これは中期安定化に対するリスク回避措置と言える。

 なお、今年の場合、金買取は堅調。我々は半年間で、前年同期比2.5倍の10.8㌧を買い取った。金買取の好調は外貨獲得に大きな寄与となった。

 一方、BoMはマクロ経済対策の一環で、米ドル対策を実施した。例えば、準備預金制度でトゥグルグ建て預金なら準備率を下げ、外貨なら準備率をトゥグルグの2倍にするなど方策を講じた。

 ――商業銀行の資金源について聞きたいのですが、モンゴル銀行は商業銀行に対して貸出できるのでしょうか。

新型コロナウイルス感染防止時、銀行の払い戻し・流動性要件を25%から20%へ下げており、銀行システムの39.7%に達した。前述したとおり、BoMは銀行向け貸出金利を10%へ下げており、銀行預金金利より低くなった。そのほか、BoMは金融市場の安定化と資金決済を図るため、貿易開発銀行の返済5億米㌦を除くと、総額3兆9000億トゥグルグをレポ取引で2兆4000億トゥグルグ、スワップ取引で1兆5000億トゥグルグを貸出した。

 なお、返済一時停止及び期間延長などを通じて、借主に対して救済と不良債権の発生を抑えている。さらに、予知できないリスク回避を目的に預金払戻を速やかにできるよう、貸出担保要件見直しを行った。

 BoMはより柔軟で、包括的な取り組みを実施している。

――各国の経済成長は失速に見舞われて信用格付けも下がる中、モンゴルの状況をどう見ていますか。

 モンゴルの場合は、信用格付けが比較的に安定している。我々も、政府が適時適切な方策を講じた結果、国内外投資家の信頼維持、対外債務の返済能力があることを公示できたからと見ている。BoMと財務省は、3月と5月に国際格付け会社フィッチ・レーティング、4月にムーディーズ・インベスターズ、6月にスタンダード&プアーズとそれぞれオンライン会議を開き、金融情報と立場を伝えるとともに、政策や取組を説明した。

 フィッチ・レーティングとスタンダード&プアーズは5月と6月のモンゴルの信用格付けを「B」に据え置き、見通しを「ステーブル(安定的)」とした。当該格付けは、モンゴルが高度警戒準備態勢に伴う移動制限時でも、対策が適切で困難な状況を乗り越えられるとの評価である。

 もう一つは、モンゴルが国際通貨基金(IMF)との協力を続行させる方針を固めた。これも投資家にとって良いシグナルとなる。承知の通り、モンゴル政府とBoMは財政及び国際収支赤字に対する資金調達のためにIMFと交渉入りして、IMFも緊急融資支援枠で9900万米㌦を供与した。

 IMF拡大信用供与措置(EFF)は成功裡に終了となり、その支援は次の緊急融資プログラムとして続行する。

 ――マネーロンダリングに関する金融活動作業部会(FATF)は、モンゴルのFATF勧告実現に関する取組を高く評価したようですが、これについて教えてください。

 これは決して小さな成果ではない。モンゴルは、FATFは昨年10月、資金洗浄・テロ資金供与対策に戦略的欠陥を有する国、すなわち非協力国として指名されてしまった。FATFは6つの審査項目を指摘して実行を勧告した。勧告実行状況に関する中間報告は今年1月、中国で開催されたFATF会議で審議された。

 結果、達成率を50%とした。他方、FATFも4月28日、新型コロナウイルス感染状況を踏み、関係国に対するモニタリング調査を4カ月間一時停止すると声明を出した。一方、FATFは財務省とBoMの要請を受け、対モンゴル評価に係る日程を延期することなく、通常通りに報告書を審査した。その後、FATFは6月24日、モンゴルの取り組みを高く評価し、すべての審査項目を忠実に実行できたとの声明を発出した。

ちなみに、FATFはこれまで、非協力国に51カ国を指定。これらの国が解除にかかった期間は3年2カ月という。一方、モンゴルの場合はわずか7カ月で脱出できた。

――ありがとうございました。

 

情報源:モンゴル銀行