モンゴルの原油開発の見通し

特集
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2019-11-07 15:38:14

 全時代の政府の目標でもあった製油所建設事業が具体化に向けて進行している。 ドルノゴビ県アルタンシレー郡に建設される製油所を同県サインシャンド市と結んだ27㌔の鉄道、17㌔の舗装道路、110キロワットの送電柱の建設工事が完成し、工場への機械設備、機材が輸送できるようになり、製油所の建設事業が始まる。

 12億米㌦の資金で建設されるこの製油所の施設建設は2020年春にスタートする。なお、 製油の施設は2021年から始まり、順調に進行すれば、2023年に完成し、モンゴルの生産量の30%、国内総生産の10%が伸びると試算されている。 そのほか、国家予算に毎年1億5000万米ドルが盛り込まれ、 ドル為替レート20%、外貨の外流れが20~30%減り、600人の雇用創出できる。最も重要なのは燃料を国内生産で可能になれば、ガソリン価格1㍑当り約1000トゥグルグ、政府支援となれば800トゥグルグにも 削減可能となる。さらに生産能力が200㌧になれば1㍑当り800トゥグルグ以下になる余裕が十分ある。モンゴルのガソリン燃料の年間消費量は180万㌧であり、これには10億米㌦を費やしている。ここからは経済の基盤となる鉱業、農牧業分野は全消費量の6~7割を占めている。

原料採掘経費で提供か市場価格で提供?

 モンゴルには原油湧出可能の33地区がある。これにはドルノド県にあるタムサグ第21 、トソンオール第19、ドルノゴビ県第14地区から年間100万㌧原油を採掘し、中国に輸出している。これらの地質確定埋蔵量は3億3200万㌧で、採掘可能埋蔵量は4300万㌧である。全埋蔵量の15%のみを採掘可能だという。世界的に埋蔵量を100%採掘できる国はほぼない。なぜかというと、埋蔵量の何割を採掘できるかは地層エネルギーによる。地層のエネルギーが多ければ多いほど、原油採掘できる。例えば、北隣国は一部油田の埋蔵量の8割まで採掘している。 2015年~2039年までの間、上記の3カ所の油田から年間150万~160万㌧の原油採掘と計画している。製油所が運営されれば、モンゴルは採掘原油を100%国内製油所に供給となる。なお、市場価格で提供か、採掘経費で提供かというのが課題になる。中国は自社採掘の原油を市場価格で提供するに違いないであろう。2032年終了の生産分与契約通りにモンゴルには全採掘原油の25~30%が当たる。政府はその分与されたものとなる25~30 %の石油を採掘経費で購入でき れば経済に大きな支援となる。 なぜかというと、全経費の85%を原油価格と運営であり、他の経費は15%のみ占める。

原油パイプラインではなく鉄道建設が有益?

 モンゴル製油所国有企業は原料をトソンオール第19とタムサグ第21油田からの供給を計画している。従って、トソンオール第19油田は製油所から 550㌔、タムサグ21油田から640㌔の場所にあるので、最も近いトソンオール第19で原油収集所を建設し、製油所までパイプラインの建設を計画していた。なお、モンゴル政府はパイプラインの建設より鉄道敷設の方が東地域における鉄道インフラ整備が的中だと考えた。油田から製油所までのパイプライン輸送は経済的に節約できるが、建設経費は3億5000万米㌦。タムサグ第21油田からサイシャンドまでの鉄道敷設も製油所建設と同様な費用がかかるが、製油所の幹部は政府の立場を支持し、パイプラインと鉄道輸送には違い はあまりないという。

採掘可能埋蔵量の確定強化 が必要

 モンゴルの採掘可能埋蔵量は4300万㌧であり、その800万㌧を採掘し輸出している。現在、3500万㌧の確定埋蔵量があるが、これは製油所運営には不十分である。そのため採掘量に合わせ、年間150万㌧生産能力の製油所建設を計画してい る。なお、国内需要を100%満 たし、輸出を目指せば、原油の調査も迅速化し、採掘量も増進する必要がある。

 このため、モンゴルの地質学者らは積極的に取組み、現在3地区で原油を発見している。例えば、トルノド県ガルバ第11、フフノール第18、マタド20の地区で油井(ゆせい)を設置した結果、ある程度の原油が湧出した。ガルバ第11からは試験として1500㌧を採掘し、2018年に中国へ輸出している。なお、フフノール第18では35㌧を採掘しているが、現在、停止されている。マタド第20では今年3本の油井設置を計画し、その2本をボーリングし、その1本から湧出したという初期結果が出ている。

ガソリン燃料を国内生産の経験あり

 モンゴルと旧ソ連の地質学者らが1940年代にモンゴルで原油共同調査を実施したのが始まりとなる。1949年にドルノゴビ県ズーンバヤン、ツァガーンエルス地区でチョイバルサン元帥が初のボーリングを行ったことで、モンゴルの採掘がスタートした。1949年~1969年に49万㌧の原油を採掘し、国内製油所に提供したA76(低オ ク)とディーゼル燃料を生産していた。しかし、1969年に旧ソ連で大規模な油田が開発され、モンゴル工場事故が発生したため、活動が停止された のだ。なお、1980年のイギリスのBritish Petrolium社が原油埋蔵可能な区域を選別させた。なお、モンゴルとソ連の共同地質調査及び地表サンプル、バイオ科学調査などを基盤に選別を行なった。1991年に24の原油探査地区を選別し、1993年にトソンオール第19、タムサグ21油田に初の生産分与契約を締結し、1998年に試験として初の原油を中国に輸出。1994年~2010年までに開発調査を行い、2012年に活発な採掘が始まった。なお、製油所が完成すれば、ロシアの完全依存が解除されるであろう。