古代動物の化石からタンパク質 コラーゲン、アミノ酸等を取り出す
社会 1922年からモンゴルでは、アメリカ・ニューヨーク市の自然史博物館アジア研究チームが古生物の研究を始めた。人類の起源、とりわけ中央アジアの研究分野がブームとなり、アメリカ自然史博物館の研究チームは古生物の研究ではなく、古代人類の祖先を探る目的でモンゴルを訪れたという。博物館のオズボーン元館長が同研究チームを主導し、フィールドワークによる研究結果は1930年に出版され、世界中に広まった。当時はモンゴルで旧ソ連の影響が大きく、アメリカのチームが長期間かけて調査研究は出来なかったという。旧ソ連の研究チームは、1946年末に初めてモンゴルを訪れ、恐竜の研究を本格的に開始した。
国内では古生物を研究する組織が必要だと考えられ、1961年に設立されたモンゴル科学アカデミー(MAS)に古生物学研究所を設けた。1964年、バヤンホンゴル県の遊牧民がラクダを遊牧していた際に大きな化石を見つけたという情報が古生物学研究所の初の調査だった。発見されたのはタルボサウルスの骨で、同骨はこれまで自然史博物館に保管されていたが、現在はフンヌ・ショッピングモールに展示されている。
同研究所のヒシグジャブ・ツォグトバータル所長に、モンゴルにおける古生物学の調査のこれまでの成果や辿ってきた研究史について聞いた。
――所長が大学卒業する頃に恐竜研究の位置づけはどの程度だったでしょうか。所長は最初の古生物学者であるのでしょうか。
世界の科学は1990年前後の二つに分かれていました。モンゴル・ロシア共同の研究チームが1969年に設立され、その前に、ポーランドと共同研究を行っていました。ポーランドとの研究成果はすべて英語で出版されます。古生物学の母語は英語であり、恐竜に関する研究資料の95%以上は英語で出版されています。現在は科学がグローバル化され、関連諸国の研究結果や情報が良く整理されています。ロシアも研究結果を英語で出版するようになりました。私はモンゴルの初代古生物学者には入りません。時代の区切りを30~40年だとすれば2代目に入るのかなと思います。
――世界で400種類以上の恐竜の化石がある内、80種類がモンゴルの地域から発掘されたと聞きましたが、、、
七面鳥や雄鶏、恐竜に至るまで建物に入り切れないほど大きな化石もあります。海外から見つかる場合もあります。ただし、同類の化石が海外で発見された場合、国内の化石と比較し、新種であるかどうかを判断します。言い換えれば、比較研究をしてから結論を下します。世界の恐竜研究によると、恐竜は2億2000万年前の爬虫類から進化した。2億2000万年前は三畳紀の終わりです。モンゴルではまだ、三畳紀の恐竜の化石は発見されていません。ジュラ紀から少し、ほとんどは白亜紀に発見されました。
――新種だと判断する期間はどれぐらいでしょうか。
研究結果が出る時期は様々です。一年以内に出る結果もあれば、10年かかる研究もあります。モンゴルは化石数と研究結果では世界で3位に入ります。モンゴルで発見された化石と比較せず、新種だと判断し難くなりました。現在の400種類と明確に異なると判断するには長年の研究が必要です。
――国内の古生物学の歴史について、、、
1990年の民主主義以降は古生物学においては厳しい時期だったと言えます。化石といっても、骨のように直接掘ることはできません。高度な技術作業を行います。それを知らない人によって破壊された化石は多かったです。しかし、2014年から文化遺産法が一部改正され、古生物学に関する条項が追加され、法的環境が改善されました。古生物学の遺物を探索する専用道具がないため、学者は自然データを元に作業を行います。
――肉食と草食恐竜の違いは何でしょうか。
初期に判断することは難しかったです。今は直ぐに判断できます。例えば、牙の形などは肉食性であることは誰にでも明らかです。現在は、研究を進めると共に肉食、草食かを体格で判断可能なデータがあります。
――古生物学研究の今後についてどうお考えですか。
現在、新種というより古生物学における細胞の研究を進めています。また、細胞の専門家を育成し始めました。古代動物の化石からタンパク質、コラーゲン、アミノ酸等を取り出す実験を行っています。研究者は古代人と生活していたライオンや象の永久凍土の化石からタンパク質成分を発見しました。私たちは今、恐竜からのタンパク質成分を 取り出す研究に最善を尽くしています。国内では保存状況が良いため、見つかると期待しています。