自然保護しながら観光促進を!
社会
(ウランバートル市、2023年10月13日、モンツァメ)9月23日、アジア開発銀行(ADB)とモンゴル政府による共同プロジェクト「持続可能な観光開発」が開始した。
世界の飲料水の殆どは淡水湖に含まれている。フブスグル湖はモンゴル最大の淡水湖であり、面積は2番目に大きく、200万年以上前から存在する、世界17古代湖の一つでもある。水の透明度が高く(深度18㍍以上が一般的)、モンゴルだけでなく世界で最も原始的且つ重要な飲料水保護区である。また、フブスグル湖はモンゴル淡水の70%、世界淡水の1%を占める飲料水の貯水地であり、広大な雪山と森林に囲まれ、観光客を魅了する。
フブスグル湖を訪れる国内外観光客数は、同湖で営業するツーリスト・キャンプの増加に伴い、年々急増している。道路アクセスが改善されたことが大きな要因であり、例えば2004年には7716人だった観光者数は、2019年には約7万4178人に達した。コロナウイルス感染症の流行により、2020~21年の大半は公園が閉鎖されていたが、観光が回復されつつある。
しかし、「海の母」とも呼ばれるフブスグル湖は、多くの脅威に直面している時期にADBとモンゴル政府が共同で実施しているプロジェクトにより、問題は解決されている。ADBとモンゴル政府は、環境を保護しながら国内外からの観光客増加の支援を目的に、2019年10月初旬、エコツーリズムに関する「フブスグル湖国立公園における統合的な生活改善と持続可能な観光プロジェクト」を終了し、第2フェーズである「持続可能な観光開発プロジェクト」に着手した。
豊かで強靭なアジア太平洋日本基金(JFPR)からの300万米㌦の無償資金協力による「フブスグル湖国立公園における生計向上と持続可能な観光の統合プロジェクト」を通じ、フブスグル湖周辺における地域観光活動の構築、家畜と牧草地管理の改善、廃棄物管理の強化が支援された。同プロジェクトは、保護地域における生計、観光、廃棄物管理の問題に取り組んだモンゴル初のプロジェクトである。限られた能力と資源の中、観光から得る利益も限定され、過剰な家畜放牧が植生や土壌にダメージを与え、フブスグル湖が汚染される等の問題解決を支援した。
持続可能な観光開発プロジェクトは、フブスグル湖国立公園とヘンティ県にあるオノン・バルジ国立公園をインフラ整備、衛生、観光業界の成長を持続可能な形で管理する能力を改善することにより、保護地域ネットワークにおける経済的且つ包括的な観光と保全モデルとして改革することを目指している。また、観光と保護地域管理に焦点を当てたモンゴル初の融資でもある。
モンゴルの小規模な観光部門は急速に成長し、2017年の観光業は12億米㌦の収益を上げ、12万1500人の雇用を創出した。従い、2028年までには21億米㌦の収益を上げ、14万9000人の新規雇用が予測されている。モンゴル政府は観光業の拡大に向け、モンゴル国土の21%を占め、2030年までに30%に達することを目標としている保護地域におけるエコ・ツーリズムに焦点を当てている。
国家レベルでは、保護地域内の生計、観光、廃棄物管理、生物多様性保全のバランス確保の統合的アプローチが急務である。保護区は一般的にインフラ整備が限られた地域に位置しているため、環境と生物多様性の保全、コミュニティへの利益提供、持続可能な観光が課題となっている。フブスグル湖国立公園とオノン・バルジ国立公園は、政府にとってエコ・ツーリズムの優先課題であるが、生物多様性の主要な供給源でもあるため、慎重に管理する必要がある。
ADBから3800万米㌦、モンゴル政府から40万米㌦の融資を受けた同プロジェクトは、観光と保護地域管理に焦点を当てたモンゴル初の融資であり、経済的に有意義な開発と保全モデルとなる。
同行のモンゴル担当カントリー・ディレクターのシャノン・カウリン氏は今年8月下旬、フブスグル県で実施中のプロジェクト関係者や報道陣を伴い、プロジェクトの進捗状況を視察した。
フブスグル湖国立公園は、地元の生計に利益をもたらし、生物多様性に悪影響を与えない持続可能な観光実現に向けた以下の課題に直面している。
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観光関連の拡大は、計画性がない中で進んでいる。国立公園管理局、コミュニティ、ツアー・オペレーター間の連携がなく、観光ビジョン、目標、行動規範も共有されていない。
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フブスグル湖国立公園内の殆どのコミュニティは、観光関連の利益へのアクセスが限られていた。
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観光業から出る無秩序な汚水や固形廃棄物は湖の水質を脅かし、さらにフブスグル湖への未舗装道路は大量の粉塵汚染を引き起こしている。
公園地域の主要な生計源である家畜の放牧は過放牧のために減少している。