Ulaanbaatar
モンゴルにおけるタヒの野生化とその歴史
社会
1月29日、チェコからモンゴルを訪問中のプラハ動物園のミロスラフ・ボベック園長に取材するため弊社取材チームが、通訳のヴエロニカ・カピショフスカ・モンゴル研究者と打ち合わせのためトーシン・ホテルへ行った。挨拶を交わした後、ホスタイ山脈に向かった。ボベック氏の車が野生馬（タヒ）の山道に行き、私たちも同行した。やがて道沿いの山腹にタヒや鹿が見えてきた。ボベック氏は半日、周辺の道を歩き、タヒの写真を撮ったり、動画を撮影するなど多忙がらインタビューに応じてくれた。
――まず、自己紹介をお願いします。
私はチェコ共和国のカレル大学を卒業した動物学者です。2010年以降プラハ動物園の園長として務めています。大学卒業後、チェコラジオ放送局でジャーナリストとして勤め、長年にわたり科学分野を宣伝してきました。いくつかの動物保護プロジェクトも実施し、積極的に参加してきました。また、野生動物についての記録映画や放送番組、単行本を制作・出版しました。 例えば、モンゴルで「私たちのタヒはどこから飛んで来るの？（Where Do our Takhi’s Fly from?）」（内容：プラハ動物園の園長が制作した動物についての物語）などの2冊の作品を翻訳しました。最近は、モンゴルでタヒを野生化させ、アフリカのカメルーン ではゴリラ保護プロジェクトにも参加しています。私が動物学者になったのは偶然なことではなく、祖父は猟師で、母は科学教師だったのをきっかけに、動物界と繋がり、この分野で働く大きな影響を受けたのです。私がプラハ動物園の園長になって以来、野生動物に関する情報を多く公開してきました。それが理由かも知れませんが、動物園の来園者数が前年より数倍に増加したと思います。また、来園者らに動物を見せるだけではなく自分なりの世界で理解できるような環境作りを目指していました。2000年に私はホスタイ山脈での動物移動調査を行うためモンゴルにはじめて来ました。2014年にモンゴルでタヒの野生化活動に 貢献したとモンゴル政府が評価し、大統領令で「友情（ナイラムダル）」勲章、2022年に「アルタンガダス」勲章を授与されまし た。ここで感謝の気持ちを表したいです。
ーータヒ野生化第4回目のプロジェクトをドルノド県で実施すると聞きました
が、、、
我々がモンゴルを訪れた目的は、ドルノド県でタヒを野生化させるプロジェクトについてモンゴル側の関係者と面談することにあります。現在、モンゴルのホスタイ山脈、ゴビの自然保護区のB地区、ホミーンタル3つの地域でタヒが野生化されています。しかし、ドルノド県にはもともとタヒがいないため、2019年以降、ドルノド県にタヒの野生化活動を開始するため動物分布図、植物収穫高、種類、牧場、地域状態、寄生虫、冬の気象条件等の生物学や地理学研究を様々な場面で実施しました。その結果、ドルノド県ハラフ・ゴル郡スミーン・ホーロイをモンゴルにおけるタヒを野生化させる第4回目の地域として選びました。まもなく、モンゴル側とプロジェクト実施契約書に署名する 予定です。次に、タヒの搬送、融資等の主要な活動を段階的に開始します。2026年までホスタイ山脈からハラフ・ゴル郡へタヒを移動させ、野生化させる予定です。今後、チェコからモンゴルへ少数頭のタヒを移動させます。私たちの動物園はモンゴルでタヒを野生化させる活動に12年間にわたり取り組んできました。
ーーモンゴルで生息しているほとんどのタヒの体内にプラハ動物園のタヒの血が流れていると良く聞きますか？
ホスタイ山脈でタヒの野生化プロジェクトに最初からプラハ動物園は参加し、タヒを渡していました。そこで選ばれたタヒがモンゴルで野生化されたということは、ほとんどのモンゴルのタヒの体内にプラハ動物園のタヒの血が流れているのかも知れません。
ーー「小さなモンゴル」はいつ頃、開設されますか？
今はプラハ動物園にはタヒは1頭もいません。しかし、タヒが生息していた動物園を改修し、モンゴルの草原や牧草地のような「小さなモンゴル」施設を作るように取り組んでいます。
ーーこれまで数々の章 を授与されたと思います が、、、
2021年に世界動物園、 水族館協会はプラハ動物園の「タヒ保護の長期的な貢献」を評価し、「 W A Z A C o n s e r v a t i o n Award」を授与しました。これはとても光栄な章だと思います。プラハ動物園は1930年からタヒ飼育から始まり、1934年に初めてタヒを野生動物を売買する機関から購入しました。1959年にズデネク・ウィシロフス キー、ユーリ・ウォルフ園長の提案によりタヒを母国において野生化する活動を開始してきました。彼らの提案は30年後に実施されたのです。タヒという言葉には「崇 拝する」という意味があります。モンゴル人はタヒを崇拝してきた伝統があるためにタヒという名前を付けたと思います。
ーーありがとうございます。
